AWC Edison Net       YOSHI


        
#1271/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (SXE     )  88/11/24  22:51  (131)
Edison Net       YOSHI
★内容
 私はイライラしていた。商売道具の携帯ワープロが全く機能を停止してしまったの
である。予備の代替品を使っているが勝手が全く違う。操作に不慣れなばかりでなく
手に染みついた単語登録もない。私はワープロのキーボードにあたった。

「えーーーいっ、腹立つやんけ!締切が迫ってるちゅうのに。」

 ところで、私の職業は旅先の出来事をエッセーとして新聞や雑誌のコラム覧に発表
する物書きで、携帯ワープロで全国を飛び回る忙しい仕事である。現地での取材をす
ばやくNETを通して編集室へ送るのが日課で、その原稿は数日後には活字となるこ
ともしばしばである。実に張合いがある。流行のオンライン作家と言えるかも知れな
い。

 今回は久しぶりの海外取材でアメリカの西海岸へ来ている。経費を使って見知らぬ
土地を訪れるのはハッピーだ。海外取材は新鮮なトマトのように味わいがある。おま
けに、このホテルの窓からは海辺に寝そばっているブロンズの美人のビキニ姿が目に
映る。締切で頭を悩ますことさえなければまさに天国である。

 しかし、私にはイライラ解消のとっておきの秘手があった。ホテルの電話回線から
パソコン通信・・いや、この場合はワープロ通信をするのである。時間が無いときに
する通信は最高である。学生時代の受験勉強の気持ちを思い出す。試験が迫る時に見
る深夜テレビの少し後ろめたい気持ち・・。私は一人で苦笑しながらネットにつない
だ。

Welocome Edison Net

今週のオープニングメッセージ
 99パーセントの努力が大切だ。残りの1パーセントはインスピレーション。人間、
安易な道に流されたらダメよ。

  私はホストコンピュータが人工知能であるこのエジソン・ネットが好きだ。この通
称”エジソン博士”はあの有名な発明王エジソンの思考ルーチンを模倣したコンピュ
ータでアメリカでは非常に有名な人気ナンバーワンの草の根ネットである。
 このホスト兼SYS−OPのエジソン博士は人間以上に誠実であり、マメなサポー
トをしてくれる。ネットの仲間のもめ事なども正しい判断で瞬時に解決すると言う噂
だ。彼と直接チャットもできるのもこのNETの大きな魅力となっている。

 さて早速、私はエジソン博士と話すべくチャットを始めた。

ハロー、エジソンだよ。

こんちは!はじめまして。元気ですか?(当り障りなく・・)

ほほほ、機械の私に元気?はないじゃろうて。ところで、あんさんはどうなんじゃ。

まぁ・・・。ブルーです。仕事がうまくできないんですが、気晴らしに入った次第で
す。締切が間近と言うのは困ります。

ほほう、作家かね?仕事がつまずいているのだね。

そうです。私は日本からきた物書きなんですが、最近は筆が遅くなり、締切に追われ
てばかりする毎日です。今も胃が痛いです。(機械相手に愚痴もたまには良いかな)

ほぉーーっ、仕事が楽しくないのじゃな?

そうですね。最近は仕事のスランプで苦しんでます。何かアドバイスがあったら教え
て下さい。(どう答えるかな?)

うーーむ。まぁ、役に立つかは知らんが、私の話を聞いてくれ。私は自分で言うのは
恥ずかしいが非常に役にたつ発明を数百と言わずしてきた。その経験が役に立つやら
知れん。

(なかなか凄い人工知能だ)そうですね。僕はエジソン博士を非常に尊敬してます。
あなたがいないと人類の進歩は一世紀は遅れていたのではないかと思ってます。

まぁ、まぁ、年寄りをからかうもんじゃないわ。アハハ。発明にはコツがあるんじゃ。
おっと、その前に、君は神様を信じるかね。

いやーーっ、深く考えたことはありませんが・・。(おお、面白いアルゴリズムだ。)

うーーむ。日本人は宗教心が少ないと聞くが本当のようだなぁ。まっ、そんなことは
エエとして・・。人間の意識の底には不思議なものがあるのは御存知かな?それに考
えを吹き込むと良いことでも悪いことでもかなってしまう。言ってみれば蓄音機とお
なじで、良いものでも悪いものでも忠実に同じものを再生してしまうんじゃ。それを
ある人は神様と言うのだが・・。私にはそれが何だか判らないがね。

そんな事あるんですか?(ケッタイな事言うなぁ)

ある。私は子供の頃に聞かされた言葉をいつも思い出す。「自分の蒔いた種は自分で
収穫せねばならない」と言う言葉じゃ。小さいときはボォーーッと聞いていたがやっ
と最近意味が判るようになってきた。まったくそのとおりの事じゃ。

はぁ・・。(コンピュータの説教か・・)

例えばあんたが小説家の夢を持つとする。その夢の種を深い意識に植える。その種は
大切に水を与えれば必ず芽を出す。これは自然の理だ。世間に反乱している常識とい
う色眼鏡で物事を判断し、芽が出るまで我慢できずにほじくりかえしてしまわない限
り何かしらの効果があるんじゃ。「やっぱり芽がでんかった」と嘆いてしまうのは、
否定的な考え方に降参したシルシじゃ。

うーーむ。(これを作った人はエリートやろうな)

君は失敗をしたとして、それをどう考えるかね。いいかね。それは大切な教訓なんじ
ゃよ。失敗をどのように受け取るかによって人生が決まることは多いのじゃ。電球の
発明の時がそうじゃった。何千回の失敗よりも一番苦労したのは、否定的な考えを起
こさないようにすることだった。
「この方法では駄目だ。他によい方法があるに違いない」と考えるようにした。それ
が正しい考え方だ。人間の能力と言うのはそれほど大きな違いはありゃせん。ドング
リの背比べじゃ。しかし、自分をどう考えるかによっては不可能なことがなくなるこ
ともある。

どんな事でもかなうもんですか?

 かなう。極端な言い方をするれば、何を考えるかが人生を決める大きなポイントな
んじゃ。不平不満でせっかくのチャンスを逃したらだめだよ。
 話が長くなったようじゃな。まぁ年寄りのたわごとだと聞き流してくれ。これで私
も吹っ切れた気分がする。そろそろ、あちらの世界に戻ろうかのぉ。

ブチッ!!

突然回線が切れた。自分だけ言いたいことを言って切るとは失礼なコンピューターだ。
まぁ、こちらとしても、こんな事ばかしていられない。さぁーーて、締切、締切・・。
仕事に励もう。

 帰国後、数週間が過ぎた。取材先で気晴らしに入った本屋で読んだパソコン雑誌に
小さな記事が目に入った。
 「エジソンネットの突然の閉鎖」である。閉鎖の日は私が博士とチャットした日と
偶然に一致している。
 記事ではホストコンピュータの持ち主が精神的疲れからホストを休止したと告げて
いた。彼は現在、錯乱状態になっており「エジソン博士が行ってしまった。行ってし
まった。」と何度もうわごとをつぶやいていると報じていた。テクノストレスが原因
らしい。
 私はあの時のチャットを少し思いだした。

(エジソン博士、あなたはもしかして本物の・・。)

 しかし、現在迫って来ている締切は私の心を現実に引き戻して行った。さぁて・・。
仕事に励もう。私は背伸びをした。
−−−−END−−−−

(これは、他のNETでUPしたものを数語書き換えたものです。御精読ありがとう
ございました。)




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