AWC K&D>ドジ      あるてみす


        
#1193/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/10/18  21:44  ( 80)
K&D>ドジ      あるてみす
★内容
「でーきたっと。」
 照美は、おもむろにキーボードから手を離してパチンと叩いた。
「うーん、我ながら傑作ね。」
 本当に傑作かどうか、そんなことは他人が見てみないと、自画自賛ということも
あるから何とも言えないのであるが、そんなことはお構いなしに照美は大はしゃぎ
する。
 彼女、何をトチ狂ったのだろう。あろうことか、あるまいことか、PC−VAN
の中のSIGの一つであるAWCで行なわれる予定のK&Dとかいうものに応募し
よう、などと思ったらしい。一体、何を考えているのやら……。

 で、作品ができれば、次はアップである。家の電話機を電話線のモジュラーコネ
クタから引っこ抜くと、そこに自分のモデムを接続し、電源を入れる。
「さーてと。」
 いくつかのコマンドを入力し、PC−VANに接続。IDとパスワードを入れて
AWCにジャンプする。
 そして、《空中分解》とかいう、作品専用ボードに、作ったものをアップする。
 もちろん、表題の部分に「K&D>」の文字を入れることは忘れていない。
 ところが、照美は実にドジな娘であった。応募要領をしっかりと読まなかったら
しい。アップしたのは九月の二十五日であった。
 後ほど、再びアクセスしたとき、《フレッシュボイス》という、雑記帳のような
ボードで、主催者からの
『Terumiさんの作品は応募期間外にアップされたので認められません。』
 というメッセージを見て愕然とした。
「うそー! なんでよー?」
 慌てて応募要領の入っているファイルをひっくり返して読み直し、すぐに自らの
ミスを認めざるを得なくなる。
「あーあ、またドジっちゃったかぁ……。」
 ドジであることは自他共に認めているので、素直にそうつぶやいて溜息をついた。
 でも照美は、そこでメゲるような娘ではなかった。そして、変なところでプライ
ドの高い娘でもあった。
「認められないなら、認められるようにするまでよ!」
 一人、そうつぶやくと、再び別の作品を作り始めた。
 変に高いプライドを持っているため、同じ作品を期間内に再アップしようなどと
は全く考えないのである。実に損な性格であった。

「よーし、今度こそ間違えないぞー。」
 10月初め、ようやく傑作と思える作品が完成し、今度こそはの期待と共にアッ
プする。
 しかし、またドジをやらかしてしまった。アップはできたし文字落ちもないこと
までは確認したのであるが、表題に「K&D>」の文字を入れるのを忘れていたの
である。
 後日、再び主催者からの
『Terumiさんの作品はK&D応募作品と見受けられますが、K&D>の文字
が表題に入っていないため、参加作品とみなすことはできません。』
 というメッセージを見たときは、心底、自分のドジさ加減を呪った。
 それでも、表題にK&D>の文字を付け直して再アップ、ということなど全く考
えないのだから、強情もここまでくればリッパと言えよう。
 しかし、さすがの照美も二度のドジには落ち込んでしまい、そのまま10月下旬
になってしまった。

「今度は大丈夫かなぁ……。」
 さすがに二度もドジすると、照美といえども自信がなくなる。
 そう。ようやく立ち直って、三度目の正直とばかりに、また作品を作り、アップ
を試みたのだ。時すでに、10月31日、午後10時のことであった。
「表題には間違いなくK&D>の文字を入れたし、10月いっぱいまでだから期間
も大丈夫。よし、今度こそ間違いないぞ。」
 そして、PC−VANに電話をかける。ところが、時間がマズかった。
 午後10時ともなると、いい加減、混んでくる。何度かけ直しても話中である。
「ちょっとぉ、いい加減に入れてよぉ……。絶対、今日中にアップしなきゃいけな
いんだからぁ。」
 照美は半ベソをかきながら、モデムから無情に流れる「ツー、ツー……」という
音を聞いていた。何度かけ直しても同じである。
 そして、忍耐強く待つこと3時間。午前1時過ぎになって、ようやくつながって
くれた。
「よかったぁ。」
 照美は半分涙を流しながら、嬉々としてIDとパスワードを打ち込む。
 そして、ホストの遅さに四苦八苦しながらも、間違いなくアップ完了。
「今度こそ大丈夫よね!」
 別に神仏を信じているわけでもないが、なんとなくCRTに向かって手を合わせ、
回線を切断してモデムの電源を切った。

 そして、その後、PC−VANをアクセスした照美は、信じられないメッセージ
を見ることになる。
『Terumiさんの作品は11月1日にアップされましたが、これは期間外です
ので、応募作品として認めることはできません。』

---------- END ----------

注:作品中に登場する団体等の固有名詞は、実在するものもありますが、その実体
  までは反映しておりませんので、そのつもりでお読み下さい。




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