AWC 夏休み>【ブルー・ネットワーク】(8)コスモパンダ


        
#1126/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  88/ 8/22  23:50  (100)
夏休み>【ブルー・ネットワーク】(8)コスモパンダ
★内容
               (7)イルカ達

「あっ、ローだ! ローが戻って来た!」
 沖を眺めていたケンが叫んだ。
 ヒトミと一緒に傷ついたローに付き添っていたリーがケンの方に走って行った。
「おやっ? 何かくわえてるぞ」
 リーはローに向かって泳ぎ出した。リーはローがくわえている物を取り上げると、
海岸縁に立っているケンに投げた。
「ヒトミさん、これだよ、これっ!」
 ケンが持って来たものは、モーターボートと共に沈んだ筈のラップトップ・パソコ
ンだった。
 ヒトミはラップトップの蓋を開けた。防水パッキングは完璧だった。大型表示器に
は、「ログイン」の文字が現れた。キーを叩くと、幾つかのメッセージが現れた。
「動くわ!」
 ヒトミはキーを立て続けに押した。
 しかし、ローは知らん顔をしていた。ローには、ひょうたんプールのスピーカーの
音は聞こえていないらしい。あるいは、このラップトップの送信出力が小さすぎて、
研究センターのホストコンピュータにまで、電波が届いていないのかもしれない。
<ROU GO TO FRIENDS>
 突然、ラップトップの表示器にローのメッセージが割り込んで来た。
<ROU IKU NAKAMA>
「仲間って?」
<NAKAMA YONDERU! IKU!>
 ローは、背びれに掴まっていたリーを払いのけると、沖に向かって泳いで行った。
「待ってよ! ロー。イーは死にかけてるのよ! イーを置いてどこへ行くの?」
<YEE TATAKATTA ROU MO TATAKAU!>
「誰と、誰と戦うって言うの?」
<KUROI OOKII YATSU MINNANO TEKI>
「ロー、ロー!」
 リーがローを追って行ったが、たちまちローは波の中に消えてしまった。
 キューイ、キューイ、キュー・・・。
「ヒトミさん、イーが、イーがおかしいよ!」
 イーが苦しそうに喘いでいた。呼吸が激しい。無理もない。出血が激しいのだ。
「大変! イー、しっかりして! 頑張るのよ!」
 ヒトミは、再びラップトップを操作した。
                ★ ★ ★
「みんな、無事か?」
 ヘリの拡声器がヒトミ達のいる海岸の上空、五メートルでがなっていた。
 リーとケンが両手を振っていた。
「今、救急セットを持った人間を一人、そちらに降ろす」
 ヘリの側面扉がスライドし、中からケーブルアームが引き出された。一人の男が、
ゆっくりと繰り出されるケーブルにぶら下がって降りてくる。
 ヘリのローターの巻き起こす風が、海岸にいるヒトミ達を叩く。細かい塵や砂が舞
い上げられていた。
 男は、海岸に足が着くと同時に、身体からケーブルを外し、ヒトミの方に向かって
走って来た。
「ひとみ ダイジョウブ デスカ?」
「ミッシェル!」
 ミッシェルはヒトミの側にひざまずくと、持って来たバックの中から医療セットを
広げた。
「コレハ ヒドイナ」
 彼は、イーの全身の傷を見て呟いた。
「ヒトリジャ デキナイナ」
「私も手伝うわ。何でも言って頂戴」
「イヤ、ひとみニハ アノヘリデ イッテモライタイ トコロガ アル。ミスターニ
シダカラノ ヨウセイダ」
「でも、イーを放っておけないわ。第一、あなた一人じゃ、イーを手当てできない」
 ミッシェルはバックの中から、トランシーバーを取り出した。
「コチラ、みっしぇる。モウヒトリ キテクレ。コドモタチト ひとみハ へりニ
ノセル。イソゲ! ジカンガ ナインダ!」
「でも、ミッシェル。このイルカは、イーは、ただのイルカじゃないのよ。ケンやリ
ー、そして私達みんなのマスコット。いえ、友達なのよ」
「ワカッテイルヨ。デモ、イマハ モット タイヘンナ コトガ オコッテイル。ソ
レヲ シラベテ ホシイ。ソレガ デキルノハ イマ コノシュンカンニワ キミシ
カイナイ! ギロンノ ヨチハ ナイ。イクンダ!」
「大変なこと?」
「ソウ、ニシダサンヲ タスケテホシイ。いーワ ボクニ マカセテクレ。サア」
 ミッシェルは、ヒトミの抗議を頑として受け付けなかった。
「ミッシェル、来たわよ」
 いつの間に、来たのか。そこには、木村涼子がいた。
「ヒトミさん、子供達を連れて、ヘリに乗って」
 もう、何を言っても無駄だった。ミッシェルと涼子は、イーの手当てを始めた。
 ヒトミは、自分がのけ者にされたような気がした。
 気がつくと、リーとケンが、手当てを受けているイーを見下ろしていた。
 ヒトミは、リーとケンの後ろに立った。そっと、二人の肩に手を置く。
「行きましょう。ここにいては、イーの手当ての邪魔になるわ」
「嫌だ!」ケンが声を荒げた。
「ケン、聞き分けのないことを言うもんじゃないわ」
「イーは僕とローを、あの『黒い奴』から助けるために、怪我したんだ……」
 ヒトミはラップトップを取り出し、苦しそうに喘ぐイーの側にしゃがんだ。
「イー、私達、みんなここにいた方がいいかしら?」
<IKE!>
 ヒトミの囁きに、イーは拒否の反応をした。
「私達が嫌いなの? だから、行けって言ってるの?」
<SUKI..>
<UMI OOKII..TAKUSANNOKOTO ARU.>
<UMIO SIRE! UMIO MIRO! IMAGA SONOTOKI!>
 ヒトミは黙って、ラップトップの表示をケンとリーに見せた。
「イー、行きたくないよ。ここにいる!」
 ケンは、イーの首にしがみついた。
<YEE  DAIJOUBU>
「イー、ぼく、イーが好きだ。大好きだよ。世界で一番好きだ!」
<YEEMO KEN SUKI... DEMO IKE!>
「ケン、行こう。イーが言ってるんだ。海を見に、行こう!」
 ケンは、リーに引きずられるように、ヘリに向かった。やがてケーブルを身体に巻
いた二人は、ヘリの機内に消えて行った。
 イー、何を見ろって言うの? ロー、あなた達は何をしようとしているの?
 ヘリに吊られたヒトミは、心の中で叫んでいた。

−−−−−−−−−−−(TO BE CONTINUED)−−−−−−−−−−




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