#1116/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XKG ) 88/ 8/14 21:58 ( 57)
「噂のスーパーガール」(15) クエスト
★内容
明美は部屋を出ると廊下から階段を下りて行った。人影はない。部屋からコンパニオ
ンの驕声が漏れ聞こえる。
一階のフロントに出る。カウンターで若い店員が所在なげにしていた。明美に気付く。カウンターを出て近づき何か言おうとしたが、その前に明美のパンチが男のみぞおちに
決まっていた。男は無言のまま崩れ落ちる。
裏手に回る。控えの部屋から明美を拉致した組員の笑い声が聞こえた。明美はキュッ
と締まった口許を微かに緩める。
駐車場。ベンツが待機している。運転手はCDの音楽で御機嫌にしていた。明美が微
笑みかけるとパワーウインドウを下ろす。腕を突っ込んで首をつかむ。しばらく男はも
がいていたが、やがてのけ反ったまま動かなくなってしまった。
男を放り出し、イグニッションを回す。アクセルを踏み込む。ベンツはギュルギュル
と急発進し「夢の花園」に向かって行く。裏口の扉が弾け飛びベンツは高貴な鼻先を廊
下に突っ込んだ。悲鳴があちこちで上がり客、店員、コンパニオンが逃げ惑う。
明美はベンツを駐車場一杯にバックさせるとさらに勢いをつけて建物に突っ込んで行
った。
ドッカーーーーーーーーーーーーーン
廊下の壁材が捲れ上がり下地の鉄骨がひん曲がる。ふかふかの絨毯の上をベンツは突
っ走り、玄関のガラスドアーを粉微塵にして表通りに飛び出し、違法駐車の車を弾きと
ばしてようやく止まった。
明美はゆっくりと車から降りると再び建物に入った。照明は消え、もうもうたる埃が
立ち込めている。闇の中に男が立っていた。組員の男だ。胸元から黒光りのする拳銃を
男は取り出すと明美に狙いをつけた。
バッキューーーーーーーーーーーーン
一瞬の差で明美は身をかわし、待合用のテーブルをつかむと男めがけて投げつけた。
テーブルはど真ん中から男の頭にぶち当たり、天板のガラスが派手な音を立てて砕けた。 明美は物陰で震えていた組員の相棒の襟をつかむと、よれよれになった男と共に表に
放りだした。
また内に戻り、鉄骨をかきわけ構造柱を探し出すと、明美は渾身の力を込めて鉄骨を
引っ張った。鉄骨とコンクリートの基礎を繋ぐボルトがちぎれ天井がミシミシと不気味
な音を立てる。明美は宙に浮いた鉄骨を玄関の方へ向かって引っ張って行った。各階の
梁が外れ床が抜ける。建物は僅かに形を変えた。そして中央へ向かって崩壊が始まり、
次いで建物全体が裏手の駐車場へ傾くと一気に大音響をたてて崩れ落ちた。
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ドドドドドドドバリバリバリバリバリ
ドッシャーーーーーーーーーーーーン
救急車やパトカーのサイレンが近づいてくる。
明美は手の埃を払うと、遠巻にしてビルの崩壊を呆気に取られて見ていた群衆に向かって言った。
「タバコは吸わないことね。多分ガスが漏れていると思うから」
そして傷だらけのベンツに乗り込むと福原を脱出した。
彼方で鈍い爆発音が聞こえ、福原の上空が明るくなった。
家の近くでベンツを捨て、明美は家に戻った。
部屋の姿身に自分の姿を映す。少し埃にまみれていたが、「夢の花園」で掠めてきた真
紅のミニのワンピースが凄絶な表情の自分とよく似合っていた。
「よし!これから私、このスタイルで売り出そうっと。そうよ、私は噂のスーパーガー
ルなのよ」
夜がしらじらと明けていき、やがて明美は健作に戻ってスヤスヤと寝息を立てた。
つづく