AWC 珍作劇場> あなざー  白雪姫(最終話)     COLOR


        
#983/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (BMD     )  88/ 4/30  23:29  (127)
珍作劇場> あなざー  白雪姫(最終話)     COLOR
★内容
 白雪姫の遺体の納まっているガラスケースを見た【影】は言葉を失ってしまいまし
た。継母から暗殺命令が下された時に忍びなくなって、白雪姫を城外に逃したのは何
を隠そうこの【影】だったのです。
「おぉ………白雪姫、貴方は何故に死んでしまったのですか? まだ死ぬべき歳では
ないでしょうに………あぁ今にも立ち上がって微笑んでくれそうなのに」
 悲嘆に暮れている【影】を慰められる言葉など誰にも見つかる筈もありません。
森は一層悲しみに沈みました。
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1988年 4月30日

        珍作劇団公演 「あなざー 白雪姫」
          SCENE・FINAL 「白雪姫よ永遠に」
                              by COLOR

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*** 忘れられた ***
 継母が【瞑想の間】に篭って既に4日が過ぎていました。100日にも及ぶ時すら
あると言われている瞑想ですが、継母はそれほどの瞑想に耐えられる程の魔力はあり
ませんでした。やはり魔検(魔法魔術検定試験)最低の2級の技術力では死者復活の
呪文は少々荷が重過ぎたようです。あっさり3日で自分の魔力の限界を悟ってしまっ
たようでした。

「ふ、ふんっ! 考えてみればなんでこの私が白雪姫などを復活させなくてはならん
のだ? やめだやめだ。腹は減るは疲れるは………踏んだりけったりじゃないの」
 いったい誰が踏んでいるのかは別として………とにかく継母は都合のいい被害者意
識を振りかざしています。
「でも………ここでやめたらまるで私が無力みたいだし………あぁ、悩める年頃ねぇ」
………まぁいいんじゃないて゜すか?

*** 王子現わる ***
 【影】は王に事の成り行きを報告するために城へ去ってしまった後のことでした。
「あやや? あっちの方向から馬の足音がすんべ」
「んだんだ」
 普通の人間よりも数倍以上も5感に優れている小人達が敏感に蹄の音を聞きつけた
様子です。
「あっちの方向は………禁断の方向ではないんか?」
 小人達が警戒を強めました。小人達の間ではいわゆる【禁断の方角】というのがあ
りそこへ足を踏み込んではいけないという強いきまりがありました。まさに足音はそ
の方角からするのです。
 小人達はサッと姿をくらませ足音の正体を見極めんと目を少女マンガの如く開きま
した。ま、あまり見映えのいいものではありませんからあえて詳しい描写は避けると
しましょうか。

カッポ、カッポ、カッポ、カッポ・・・・

 夜霧の中から姿を現わしたのはちょっと黒めの服装の中にピリリとスパイスの利い
た金色のブローチ、暗さの中にも育ちが伺えるような品のよさ。

ョ「「「「「「「「 小人達にしか聞こえない特殊音声会話 「「「「「「「「「イ
、*おい、あいつはナニモンだべ?                    *、
、*ワイが知るかいな                          *、
、*んだども結構品の良さが滲み出てねぇべか?              *、
、*そーだべさ。ワテが思うにどっかイイトコの坊ちゃんねえべか?     *、
、*ふむふむ・・・じゃぁもちっと様子を見るべか             *、
、*おっけーおっけー                          *、
カ「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「コ

 どうやら王子はガラス製の柩を見つけたようです。
「なんだ? この輝くように美しい娘は………ん? 何か書いてあるぞ? なになに?
【白雪姫ここに眠る】だと? なんと! 死んでいるのか?」
 王子は眠ったように死んでいる白雪姫をジロジロと見つめました。昔話とはいえあ
まり感心できない行為ではありました。白雪姫だって死んでるとはいえ寝顔をジロジ
ロと見られるのは恥ずかしい年頃でしょうに………
 デリカシーの「デ」の字も持ち合わせていない王子は軽く柩に手を当てました。
すると驚いたことに真空保存のために密封してあったガラスのふたが開いたのです。

「こらあかん、奴はとんだ食わせ者や」
 慌てて小人達が飛び出しました。
「ガタイは小せえが力は『さらに倍』やけんの」

 今にも攻撃に転じようとする小人達です。しかし驚いたことに王子に一睨みされた
だけで小人達はピタリと動きを止めてしまったのです。そうまるでヘビに睨まれたカ
エルのようでした。
「あかん、体が動かへんで」
「ワイもずらぜ、あやつ奇妙な術を使うずら」

 王子は動きを封じられた小人達を見て軽くニヤリと微笑むと、再び視線を白雪姫に
落としました。そして前かがみになると………なんと意識のない白雪姫の唇に自分の
唇を当てたのです!!

「この人非人めがっ!!」
「白雪姫ーーーーーーーーーーーっ!!」
 小人達の悲痛な声が轟きました。
「…………………………う、誰か私を呼んだ?」
 ガラスの柩から澄んだ声が聞こえます。あの聞き覚えのある声は、まさか?
「し、しらゆきひめ?」
「はい?」
 おぉっ!? あの独特のとぼけた口調は正真正銘の白雪姫ではないですか。

「白雪姫が生き返ったぁ」
 小人達は大騒ぎです。嬉しいのか恐ろしいのかはハッキリしませんがとにかく蘇っ
たのですから無理もないでしょう。

「あ、そうだわ、私は死んでしまっていたのね。貴方が生き返らせて下さったのです
か?」
 白雪姫は王子にたずねました。すると王子は先程とはうって変わったように答えま
した。
「はい、貴方のように美しい人が死んでいるなんて世の中の損害です」
「まぁ御上手ね」
 馬鹿は死んでもなおらない、という言葉がありますが白雪姫がおだてに弱いのも
どうやら死んでも治らなかったようです。
「申し送れました。私は隣の国の王子をしている者です。よろしければこの私めの
妻になって頂けないでしょうか?」

 自分達の存在をまったく無視されて面白くなかった小人たちが口を挟みました。
「へんだ。おまえみたいな気障野郎は白雪姫のタイプじゃないんだよ」

 ………が意に反して白雪姫はYESと答えたのです。
「………アングリ………」

*** おまけ その1 ***
 大ぼけの作者は読み直し(推敲なんてとても言えない)の最中にふとつぶやきま
した。
「おっと【隣の国(仮名)】の(仮名)を外し忘れてたな………確か【トランシルバ
ニア】とか言ってたような言ってないような? ま、いっか」

*** おまけ その2 ***
 城の中からせっぱ詰まった声が聞こえてきます。
「鏡よ鏡よ・・・この世の中のこの城の中のこの部屋の中で一番美人なのは誰っ!?
 え、私? おぉそうか、そうか。我が心の友よ! ふっふっふっほぉっほぉっほぉ
っほっほっ…………………」

 その哀しくもはかない泣き笑い声はいつまでもいつまでも城から森へと響きわたっ
たとさ、めでたしめでたし。

           <お・わ・り>    1988/04/30





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