AWC 「R.N.S.」<プロローグ3> Fon.


        
#980/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ     )  88/ 4/27  14:46  (100)
「R.N.S.」<プロローグ3> Fon.
★内容
 「Rpg.Novel.Story.」<プロローグ3>  by 尉崎 翻

「あ゛ぁ〜〜〜!!」
 ティスタが起きたとたんに出した第一声。
 脳天をハンマーでぶったたいたような感触がヘビメタの如く続いていた。
 完全な二日酔いである。
「あたたたた‥‥‥ まいったなぁ‥‥‥」
 ガンガンとする痛みをこらえながら目を開ける。目の前はベッドその向こうは
壁だ。ふと思い出す。いつのまに宿屋に入ったのだ?昨日の記憶があやふやだ。
「えっと‥‥あのチンピラと立ち回ったとこまでは覚えてるけどな‥‥」
 そこら辺で記憶がとぎれていた。部屋の中をよく見回した。
 そう高級でもなければ、汚くもない。自分がいつも泊まるクラスの部屋だ。
 酒場で床に置いていた荷物もベッドの横のテーブルに置いてあった。
 愛用の鎧もある。さらに服も。 服も?
「あれ!?」
 そこでようやく気ずく。自分はベッドの上に生まれたままの姿で眠っていたと
いう事に。さ・ら・に。ベッドの同じ布団の中に誰かが一緒に寝ていることに!
「な、ななななな‥‥!!」
 「?」マークと「!」マークが脳裏で錯乱していた。
 まさか‥まさか‥‥‥! まさか、まさか、まさかーっ!?
「な、だ、誰よーっ! あっ、いたたた‥‥‥」
 叫びあげたとたんズキーンと二日酔いの痛みが増した。
 叫び声に反応したらしくモソモソとその布団の誰かが動いた。
「なによ‥‥うるさいなぁ‥‥‥」
 女性の声だ。すると、女×女でやったの!?
 思考が一点に固まったままであった。
「あ、もう朝なの? おはよう」
 布団の彼女はねぼけまなこで黒色の髪を片手でかきわけた。
 条件反射でティスタはベッドから飛び降りた。同時に二枚重なっていた布団の
上一枚を持ってくのも忘れずに、それで自分の体を隠してから黒髪の女性を見る。
 黒髪に瞳も黒い、それと肌の色から考えれば東洋系の女性らしいが布団の上か
らの体のラインから読んでプロポーションは東洋系の平均をかなり上回っている
ようだ。齢は見た感じでは20才をちょっと過ぎた位であるが、東洋系は実際よ
り若く見えると聞く。どっちにせよティスタよりは年上であろう。顔立ちは少々
東洋系にしてはキリッとしてる(別に東洋人の顔がダランとしていると言う意味
ではないが)。東洋系の混血かもしれない。
 ティスタ右手でコメカミ辺りを押さえ左手で布団の中の彼女を指している。
「だ、誰よ、あなた!?」
「あら?忘れちゃったの?昨夜のこと?」
「さ、さ、さ、さ、昨夜って‥‥‥」
 心臓が口から飛び出す位にドキドキしそれに合わせて体中も震えている。
 ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ
 と、これほど、一度に変換できる量を越えてソフトにビープ音を鳴らされるほ
ど心臓が鳴ったのだ。
「本当に覚えてないの? あなたとわたしの すてきな夜のことを‥‥‥」
 黒髪の彼女が軽く微笑む。そのトロリととろけるような仕種は女のティスタに
もゾクッとさせる何かがあった。
 わーいやだー! レズなんていやだよー、あたしはノーマルでいたいんだ。で
も一度やると癖になるって話だし‥‥‥ あわわ、冗談じゃないわよ! よりに
よって記憶がまったく残ってないなんてぇ‥‥ ひょっとして¥なことや、&な
ことや、〒なことをやったのだろうか?
 両手で頭を押さえて床にまるくしゃがみこんだ。両目を閉じれば自分が『お姉
さまぁ〜』と言いながら、背景がバラの園のベッドの上で黒髪の女性に絡みあう
場面が豪華絢爛、3D画像で映し出されていた。
「あぁ〜〜〜〜〜〜」
 ゾワゾワゾワ〜ッと背筋になにかが通りすぎた。
「レナ。からかうのはその辺にしといた方がいい」
 ベットとは反対の方向からの男の声がティスタの思考を現実に引き戻した。
 顔をちょこっと上げてパチパチッとまばたきをして声の方角に首を向ける。い
つのまにかに部屋のドアが開けられていて、長身の男がドアの柱に腕組みをして
寄りかかっていた。
「安心しなよ。レナは‥‥あ、そのベッドにいるヤツの名前だが、レナはからか
っているだけだ、君の想像しているようなことは一切していないさ」
「リクト。レディに向かって“ヤツ”とは なによ」
 レナと呼ばれた女性がベッドの上で、いつのまにかに取り出した服を着はじめ
ている。
「初心な乙女をからかう人間が、レディとは言いがたいがね」
 リクトと呼ばれた長身の男。北の国の出身らしい。北国特有の白い肌にキリッ
とした眼、高貴な雰囲気を漂わせているその顔立ちは、並の若い娘なら一目で舞
い上がってしまうであろう。ティスタもノーマルな心理状態であればドキッとし
ていたかもしれない。
 リクトは腕組みを解き床に座りこんでいるティスタの方へ歩みよった。
「だいじょうぶかい? ま、自業自得とも言えるがね。今後、酒は程々にしとく
べきだな」
「そーね。とくにヤケ酒は特にね」
 ポカンとした表情のまま凝固したティスタ。
 なっ、なんでこんな状況になっとるんだ!?
 初対面の相手にどうしてこーまで言われなきゃならないのよっ!!
 あによ。 だれがどれだけ酒を飲んだって構わないじゃない!!
 お金はあたしが全部払ってんだし! 機嫌の欝憤はらすために酒ってもんはこ
の世にあるんでしょ? 違うっての!?
 冗談じゃないわ! あたしは生活行動を人に指図される程幼稚じゃないわよ!
 酒飲んだっていいじゃない!誰かに迷惑かけるってわけじゃないんだし!(そ
うかなぁ‥‥‥)
 たかがそれ位で論を教えられたり、からかわれたり、すっ裸でベッドに寝かさ
れたりしなきゃならないのよ!!
 裸? はだか? は・だ・かぁ!?
「きゃぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 ここに至ってティスタは、自分が毛布一枚で男性のリクトの前にいる事実に気
ずき、口から若い女性特有の黄色い悲鳴を上げた。しかしその両手は既に行動に
走っていたのである。 すなわち。 バック、本、帽子、枕、時計、筆、etc
 とにかく手近にあるものを次々とリクトの方面へ投げつける。リクトはそれを
ヒョイヒョイとその場でかわす。
 遂にはティスタの手から鉄製の椅子が飛び出た。リクトはあわてて身を沈める
「ったくなんだよ。起こしてくれりゃいいのに‥‥あの娘はどうなっ‥」
 と、その椅子の放物線上にドアの向こうからバンダナを頭に付けた人物が現わ
れた。
 ご〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
 鈍い音が部屋の中をこだました。
                               <つづく>




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