AWC トゥウィンズ・1 九章 (2/3) (28/34)


        
#902/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE     )  88/ 3/11  21:38  ( 90)
トゥウィンズ・1 九章  (2/3)  (28/34)
★内容
「はは、ごめんごめん。少し驚かしてやろうと思ってさ。」
「ひどいなあ、もう。いつから起きてたのよ。」
「一美ちゃん達が入ってきた時さ。健司も俺も目覚めはいい方だからね、ちょっ
とした物音で起きちまうんだ。」
「なあんだ、つまんないの。」
「ところでさ、一体何だ?」
「何だって言われたって、別に用事があったって訳じゃないのよね。なんとなく
早起きしちゃったから、健司くんと康司くんはどうしてるかなって思って来ただ
けなの。それに博美も歩けるようになったみたいだったしね。」
「そう言えば、博美、大丈夫なのか? 今日、マイア姫のお城に帰る予定だろ?」
「なんとか、歩けるようにはなったんだけどね。でも、出発するまでに完全に歩
けるようになるかどうかは、ちょっとね。まあ、段々慣れてきてるみたいだから、
出発の時には今の状態よりずっと良くなるとは思うけど。」
「その時にならなきゃ判らないか。ま、今から心配しててもしょうがないんだし、
とにかく早く足を慣らすことだな。まずは、朝飯になるまで、少し慣れるように
するか。」
「うん。まだ少し痛みが残るけど大した事なさそうだし、早く一週間前の状態に
戻りたいしな。」
「ま、頑張れや。」
 そして、朝御飯の時間までのしばらくの間、少しづつ休みながらもゆっくりと
歩いて足慣らし。
 皆で朝御飯を食べる頃には、かなり歩けるようになっていて、少しの距離なら、
なんとか普通の速度で歩けるようになっていた。
 で、折角歩けるようになったことだし、いつまでもほうっておくのも邪魔だろ
うからってことで、例の悪魔と戦った時の玉を拾いに行った。勿論、朝御飯が済
んだ後だけど。
 あの悪魔と戦った部屋に入ってみると、一週間も前のことだとは思えないくら
い鮮明に、あの時の戦いが思い出せた。そして例の玉は、丁度この部屋の中央あ
たりに転がっていた。
 こりゃ、確かに邪魔だな。こんなとこに転がってて、しかも誰にも触れないと
くりゃ、この部屋を使うわけにゃいかないわな。
 その玉は直径1cmくらいあって、今までで一番大きかった。
 で、その玉を僕が使っている部屋に持っていって、枕元にペンダントと一緒に
置く。
 その後、また少し足慣らしをして、出発する頃には、ごく普通に歩けるように
なっていた。
「博美さん、大丈夫ですか? ちゃんと歩けます?」
 出発する時、セレナ姫が心配してくれる。
「さあ、やってみないことにはねえ。でもまあ、なんとかやってみます。」
 とりあえず、プラネット公のお城を出発。セレナ姫も、本来なら馬車に乗って
行くそうなんだけど、今回は僕達と一緒に歩きたいからって言って、行列の本体
には加わらずに、その脇を一緒に歩いた。だって、行列を組むのと自由に歩くの
って、速度が全然違うんだもんね。行列に加わって歩く訳にはいかない。
 しばらくは、五人でお喋りしながら歩いていたけど、やっぱり、僕の足はまだ
完全じゃなかったらしく、ひざが少し痛み始めた。駄目だ、こんなことしてたら
マイア姫のお城に着けない。
 僕の歩く速度が他の四人より遅くなった。皆に段々離されていく。
 ちょっと離れたところで、健司が気が付いてくれた。
「おい、どうしたんだ?」
 そう言って、引き返してきてくれる。
「まだ完全じゃなかったみたいなんだ。ひざが痛くてさ。」
「やっぱり、まだ無理だったか。まあ、仕方ないな。じゃあ、博美、後ろに乗れ
や。ほら。」
 健司は、僕の前で背中を向けてしゃがんでくれる。
「えっ?」
「いいから、さっさと乗れよ。さもないと皆から遅れるだろ。ほら、いいから早
く。」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。俺を信用してないのか?」
「そうじゃなくて、僕なんか背負っていったら疲れるだろうが。」
「俺が大丈夫って言ったら大丈夫なんだって。ほら、早くしろ。」
 って言って、僕を背負ってくれる。
「すまんな。また世話かけちまって。」
「なんの。博美の一人や二人、軽いもんだ。しかし、お前、本当に軽いな。前に、
一美ちゃんが二人目の悪魔倒した時も、お前を抱いて運んだけどさ、全然重さを
感じないんだもんな。」
 そう言いながら、急いで皆のところまで追い付く。
「博美、どうしたの?」
 一美が心配そうに聞いてくる。
「まだ、足が全快してないらしい。ひざが痛むんだってさ。ま、大した距離じゃ
ないし、おれが背負って連れてってやるよ。」
「うん、お願いね。健司くん、頑張って。」
「まかせとけって。だてに体鍛えちゃいない。このくらい、わけないさ。ほら、
博美、そんな情けなさそうな顔すんなって。」
「そうは言っても、健司に迷惑かけてる自分が情けなくてさ。」
「そんなこと、気にすんなって。ま、のんびり行こうぜ。」
 頃は春、ってわけでもないんだけど、日差しは柔らかいし、とても暖かい。
 そんな状態で健司の背に揺られていたからたまらない。
 自分でも判らないうちに眠ってしまったらしい。

「おい、博美。いつまで眠ってんだ? ほら、着いたぞ。」
 僕は、その声で起こされて、辺りを見回すと、前に何処かで見た風景が……。
 あ、そうか、もう着いたんだ。ここは、僕の使ってた部屋だ。
 健司の背中があまりにも気持ち良かったもんで、完全に熟睡してたらしい。
「えっ? あ、健司、すまん。」
 僕は、慌てて健司の背中から降りる。と、再び走るひざの痛み。
「あっつ。」
 思わず顔をしかめる。

−−−− 続く −−−−




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