#871/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (DGJ ) 88/ 3/ 1 20:23 (119)
UNTOUCHABLE Fon.
★内容
「UN・TOUCH・A・BLE」 by 尉崎 翻
ディスプレイかクリヤされ新たな文字が浮かび上がった。
必要な所だけなんてことは、めんどくてやってらんない。丸ごとディスクへおとし
て同時にプリントアウトしてしまう。
早くやらないと見つかる可能性もあるわけだから。
危険だけどしかたないのだ、なんとしても単位を落とさなくするには並のデーター
ベースからの情報じゃ足りないのだから。こんなことなら、もちょっと真面目にやっ
トいれば良かった。そうすりゃこんな政府の回線にハッキングすることはなかったの
だ。
あたし?
某大学で、今年度卒業予定の女子大生。なにやってるかっていうと、教授から単位
が危ないっていわれた「平和思想」のレポート書きをやってるわけ。
卒業がかかっていて、おまけにこの単位なまけていたもんだから並のレポートじゃ
ッ年は必至なの。
しっかし、人間が宇宙を飛び回ってるこの時代にレポートは紙で書くなんてまだる
っこしいと思わない? ねっ! そう思うでしょ?
だけど頭の硬い教授は断じてそれを変えようとしない。まったく!ディスクで提出
してもいいじゃない!
あわわ、そんなこといっとる場合じゃないんだわ。
だいたい必要と思われる部分の情報がとれたから急いで回線をOFFにする。
はっきりいって政府の回線に入るって犯罪なのね。見つかったら『ごめんなさい』
じゃすまないわけ。あたしはどうゆうわけか、こういうハッキングの天性の素質があ
るらしく昔っからあっちこっちのデータベースにロハで潜りこんでいたわけ。芸は身
を助けるってのはこのことだ。
あたしがレポートの題材の一つにしているもののデータをいま政府回線から取った
わけ。それは、今ニュース等でも大きく取り扱っている例の《ハンタープラネット》
のこと。
えっ?知らないって?
だめよ〜、しょうもない小説ばっかり読んでちゃ!ろっくな死にかたしないわよ。
あのね、クルト星知ってるでしょ?えーっ!!それも知らないのぉ!?
もーっ!とにかく、クルト星っていう星があるの!判ったぁ!?そのクルト星のあ
る太陽系国家の第7惑星に衛星があるわけ。その衛星をある大企業グループが丸ごと
買い取ったわけ。そして、そこを改造してジャングルや砂漠や林とかを人工的に造っ
ちゃったのよ。そして、ロボットの動物や鳥を放したわけ。これは人間に対して絶対
歯向かわないようにプログラムされてるのね、そしてそれらのロボットを的にするハ
驛塔eィング・センターを始めちゃったわけ。
平和に反するってことで、最初はニュースでちょっと叩かれたんだけどなんとこれ
が大人気をよんじゃったの!100%安全なハンティングってことで企業の部長とか
の接待とかにつかわれて、とどのつまり20世紀のゴルフって感じでブームよんじゃ
たわけ。
そうなると二匹目のドジョウを狙ってか、あっちでもこっちでもポンポンと同じよ
うなものが出来上がっちゃって、ついには金にこまってる国家が造るとこまで出てく
る始末‥‥‥
ストレス解消にもなるってんでブームがブームをよんでますます人気が出て来たわ
けね。でも、ロボットはロボット。銃の弾が当たっても倒れるだけなわけ。
それで、最近ではリアルに血を吹きながら倒れる仕組みとか、足とかに当たったら
足を引きずりながら逃げまどう仕組み。多少だけどハンターの方へ歯向かってくる仕
組み(もちろん少しだけでハンターは100%安全なわけである)。なんてエスカレ
ートしていっちゃたのね。
んでもって、これがまたまた大ヒット。
客足がのびるのなんのって。でも、そのうちに『《ハンター・プラネット》は平和
思想に反する』って集団が出てきたわけ。でも、人数的にいって多勢に無勢。圧倒的
なハンター・ファンには勝てないのねぇ。
で、そこんとこを詳しくあたしはレポートを書いてるわけね。
やっぱり、政府回線ってすごぃ!
驕@普通じゃ絶対わかんない秘密ってのがばんばん判る!
例えば、レポートには書けないかも知れないけど銀河連邦が近々《ハンター・プラ
ネット》を造るらしい。
あたしは政府回線情報の差し障りない部分だけ抜き出してワープロに叩き込む。
う〜ん!やったね!単位は確実だわっ!
と、見ていた時にちょっと引っ掛かる箇所が出てきた。
《ハンター・プラネット》の所に《クレイヤ》って単語が出てきたわけ。
@《クレイヤ》って、あの《クレイヤ》なのかなぁ?
銀河連邦犯罪者惑星クレイヤ刑務所。
惑星の一つ全体が刑務所となっており、過去も今もおそらく未来にも脱走者ゼロを
誇る刑務所だ。
@でも、なんでこの名前が《ハンター・プラネット》に関係してくるのだろうか??
レポートを書いてる途中だってのにあたしの好奇心がちょっと動いた。
政府回線に再びハッキング。『あなたのその好奇心。いいかげんに抑えないと、と
んでもない火傷するわよっ』親友が昔言ったセリフがちょっと頭に浮かぶ。
さっきとは違い《クレイヤ》に関するエリアに侵入する。
おっと、ガードがかなりかたいわねぇ。こりゃ、プロテクトを解くまでかなりかか
りそう。でもあたし突破できないようなガードではないな。ま、ここはあたしの腕の
見せ所ってわけだ。
数日間ハッキングしているうちにちょっと予想外の事に気がついた。
銀河の総人工が12桁に手が届きそうになるこの時代。当然犯罪者の数も増える訳
である。その犯罪者を留置しておく経費が結構かかるものなのだ。それもそうね、ロ
ハで住まわせてやるんだから。昔なら働き手として使えたかもしれないが、時代が時
代である。人手として求められるのはその道のスペシャリストであり、罪人(ちょっ
とレトロしてるね)なんかじゃそこらへんのロボットの方が効率がいいのである。
ようするに犯罪者なんかは連邦のお荷物なわけ。
エリアの状態からみてこのあたりが連邦の《ハンター・プラネット》と関連してい
るらしいんだけど。
どうゆうこっちゃ?
そう思いながらタンタンとキーボードを操ってエリアの中をさまよっていく。
と、ある文書が画面に表示された。
それをみたあたし、しばらく声をだせなかった。
それは連邦政府が《ハンター・プラネット》の計画で極秘裏に行なうこと。
自分の指が小刻みに震えてるのが判った。とてつもないことを知ってしまったのだ。
そのときわたしはいやな気配を背後に感じた。 ・・・・・
あっ と、思ったときは遅かった。だれかが、あたしの自慢の金髪を掴みとりグッ
と後ろに引っ張った。あたしの眼には黒い服を着た数人の男が写ったが、それで最後
であった。なんかのショックが体中に走り意識が急激に薄れていったのだ。
この時代。突然、蒸発をする人間は何秒に1人とも言われている。
数ヶ月後。新しく出来た国家の《ハンター・プラネット》にて。
「や、どうでした?」
「すごいねぇ。さすが国家がやるだけのことはありますねぇ。ロボットの獣や鳥の動
きや死に方なんて本物とそっくりですし」
「そうでしょう。それに人間のアンドロイドまで使うとは政府も考えますなぁ」
「丁度、獣には飽きてきた所ですから。楽しめましたよ。なぜか、人間アンドロイド
はガラが悪そうなのが多いですがねぇ」 ・・
「そうですな。でもわたしがこないだ仕留めたのは金髪の可愛い女性型でしたよ」
「ほう、そうですか、めずらしいですな」
「えぇ、喉が何故か潰されていてヒィーヒィーと叫びながら逃げ回っておりましたが
ね。眉間と心臓を何ヵ所か撃ったらまるで本物そっくりに血を噴き出して倒れました
わ」 ・・・・
「そうですな。しかし最近のアンドロイド技術は進歩しましたなぁ。まるで本物の人
・・・・・・・・・
間が逃げまわってるようですからねぇ‥‥‥‥」
知ってはいけないこと、触れてはいけないこと‥‥UNTOUCHABLE‥‥‥
<Fin>