#855/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (VLE ) 88/ 2/29 20:50 ( 89)
トゥウィンズ・1 五章 (4/4) (16/34)
★内容
「おお、これはセレナ姫殿。遠い所をよくぞ参られた。我々は皆、つい今しがた
生き返ったところでな。皆で喜び合っていたところゆえ、全く何のもてなしも出
来ないのだが、ところで姫はいつ、こちらに参られたのかな?」
「マース侯もお元気で何よりです。私は自分からこの城に来ようと思った訳では
なく、ここに棲んでいた悪魔に襲われて連れてこられ、そこで、この方々に救わ
れたのです。このお二人は我が国の、そして我がプラネット家の救いの神であり、
それと同時に、この城、つまりマース侯御一族の救いの神でもあるのです。」
「おお、では、このお二人が、我が城にいた悪魔を?」
「そうです。今は女神ティアとして、国中からあがめられております。」
「それはそれは、まことに感謝致します。」
「ところで、この城には悪魔が二人いると聞いてきたのですが、ティアは悪魔一
人を倒されただけです。もう一人は何処にいるのか御存じではありませんか?」
しかし、セレナ姫って、やっぱりお姫様なんだな。僕達と話するときはそうで
もないんだけど人前だとちゃんと威厳を持って話をしてる。いくら女神様だのな
んだの言われてあがめられたって、元々育ちが違う僕達じゃこうはいかない。今
更ながら尊敬してしまう。
「そういえば、まだ我が城の半数しか生き返っていないようです。しかし、もう
一人の悪魔が何処にいるのか、私にはちょっと……。」
「判りました。いずれ近いうちに出てくるでしょう。ティアも悪魔を倒さねばな
らぬ宿命とのことなので、この城に留まって残りの悪魔を退治せねばならないの
ですが、よろしいでしょうか?」
「ぜひ、お願い致します。早速、お部屋の手配を致します。」
マース侯がそう言った時、そのマース侯の近くに黒い空間が出現した。
「うわっ! 出た!」
康司が叫ぶ。
「おい、康司。そんな幽霊が出た時みたいな言い方するなよな。もっとも悪魔と
幽霊じゃ、それ程違いはないけどさ。」
「ばか、もっと始末が悪いわい。」
そんな冗談口を叩きながらも、康司と一美と僕は身構えて、体中に力をみなぎ
らせる。三つの玉は薄く光り始めた。
「お前達、よくも我が仲間を倒してくれたな。今、ここでかたきを取ってやる。
覚悟しろ。」
僕と一美は手をつないで、悪魔に向かう。玉の光りが段々強くなっていく。
悪魔が手を動かすと、先刻のように稲妻が僕達を襲った。でも、これも先刻の
ように平気だった。
悪魔は向きを変えると、少し離れた所にいた康司に向かって稲妻を走らせた。
康司は、まだ僕達程には慣れてはいないらしく、ちょっとショックがあったよ
うだけど、でも平気だった。
「健司、悪いけど、剣を貸してくれないか。」
悪魔の方を見すえながら、健司に頼む。健司は三本の剣を持ってきてくれる。
「ありがと。これで悪魔にたち向かえる。」
剣を構えて悪魔に近づく。そばによったところで剣を一突き。難なくかわされ
てしまう。かわした所を、今度は康司が一突きした。悪魔も、さすがにそれをか
わすことはできず、横腹を刺されてしまう。でも、まったく平気な顔をして康司
の剣を掴むと、それを払いのけた。康司は、その勢いで飛ばされる。僕と一美は、
その隙に剣を捨てて悪魔に抱きつくと、両側から締め付けた。悪魔は顔を歪める
と、
「ううむ、こしゃくな奴らめ。勝負はこの次にお預けだ。」
そう言って飛び上がる。僕達は悪魔が突然いなくなったので、互いに前につん
のめってしまう。
悪魔は、そのまま健司の方に飛ぶと健司を抱きかかえ、ついでにセレナ姫も抱
きかかえて、そのまま暗闇に消えてしまった。
「あ……、け、健司! セレナ姫!」
あまりにも一瞬の出来事だったので、健司が連れ去られるのを阻止できなかっ
た。
「ほう、神というのは本当らしいですな。残念なことに、今は逃げられてしまっ
たようですが。」
マース侯が驚いたように言う。一美がそれに答える。
「ええ。それより、今の悪魔の場所を突き止めて、一刻も早く倒さないと、セレ
ナ姫と私達の仲間がどうなるか……。」
「では、我々が少し探してみるとしましょう。少しの間、待ってて下さらぬか。」
「はい。お願いします。」
「では、お部屋の用意ができ次第、そこで吉報を待っていて下され。」
しばらくして、部屋の方に案内される。さすがにソーラ王の城ほどではないが、
それでも豪華な部屋である。
「博美、ちょっといいか?」
部屋に入って、しばらくしたら、康司が入ってきた。
「何だい?」
「うん、健司とセレナ姫のことなんだけどさ。」
「ああ、早いとこ悪魔を見つけ出して倒してやらないとな。」
「そうなんだけど、悪魔探しはマース侯に任せてさ、今はゆっくり休めや。俺も
健司やセレナ姫は心配だけどさ、でも今は探そうにも手がかりがないんだしな。
だから今は、何も考えずにさ、少し休めよ。」
「でもさ、なんか、落ち着かないんだよね。一刻も早く助けてやらなきゃって思
うとさ。」
「大丈夫だよ。健司も体は鍛えてあるしな。自分のことは自分で守れるさ。それ
にあいつのことだから、セレナ姫も一緒に守ってるんじゃないか? 博美も、そ
んなに心配しないで、ゆっくり休みな。とにかく疲れを取らないと。」
「そうだな。あ、一美は?」
「大丈夫だ。ここに来る前に一美ちゃんのところに寄ってきたんだから。」
「そうか。いろいろ、すまんな。」
「なに、大した事ないって。それに、お前や一美ちゃんの方が大変だったんだし
な。ま、とにかく少し休んでろ。」
「ああ。」
康司が部屋に戻る。僕もいい加減疲れてたのでベッドに横になって、そのまま
眠ってしまった。
−−−− 5章 終わり −−−−