AWC <感想鬼>「ノンマルトの使者」コスモパンダ


        
#836/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XMF     )  88/ 2/28  18:10  ( 87)
<感想鬼>「ノンマルトの使者」コスモパンダ
★内容

<感想鬼>「ノンマルトの使者」コスモパンダ

 「ノンマルトの使者」というのを御存知ですか?
 これは一世を風靡した円谷プロダクションのテレビ作品「ウルトラセブン」で放映さ
れた作品です。

 ウルトラ警備隊に少年(真市)から警告が発せられます。
「海底はノンマルトのものなんだ」
 ウルトラセブンことモロボシ・ダンは驚愕します。
  「ノンマルト! 僕の故郷のM78星雲では、地球人のことをノンマルトと呼んでい
る。ノンマルトは人間のことである。だが、少年は確かにノンマルトと言った。それで
どういう意味だろうか。人間でないノンマルトがいるというのか?」
 そして、海底開発を中止しない人間達にノンマルトは海底開発基地を攻撃し、破壊し
ます。真市少年の言葉がダンとアンヌの耳に残ります。
「人間は、今では自分達が、地球人だと思っているけど、本当は侵略者なんだ」
 やがて、ウルトラ警備隊とウルトラセブンは、敵ノンマルトを倒します。
 ウルトラ警備隊の潜水艦は、ノンマルトの海底基地を攻撃し、完全に破壊してしまい
ます。
 ウルトラ警備隊隊長キリヤマの声が戦果を祝って狂気の如く無線で飛びます。
「われわれの勝利だ! 海底もわれわれのものだ!」
 しかし、真市少年の「人間は侵略者だ!」という言葉がダンとアンヌの心を曇らせて
しまうのです。
 ラストで真市少年が数年前に海で行方不明になっていたことを、ダンとアンヌは知り
ます。少年の魂が「モンマルトの使者」だったのでした。

 この作品中、ノンマルトの武器は怪獣ガイロスと、ノンマルトが人間の手から奪った
原子力潜水艦グローリア号だけしか登場しません。
 肝心のノンマルトは姿も声さえも登場しないのです。
 そこにこの作品の怖さがあります。
 相手も分からずに戦おうとしている人間。使者さえ無視する心の狭さ。地球は全て我
が物であるという傲慢さ。それらが浮き彫りになります。
 ウルトラセブンの作品の中でも最も異色の作品であり、正義の味方のウルトラ警備隊
とウルトラセブンは侵略者だったのでは、ノンマルトが本当の地球人だったのでは、と
いう疑問と、人間の業の深さを感じさせてくれました。
 私にとってウルトラセブンシリーズの中で最も心に残った作品です。

 さて、この「ノンマルトの使者」というタイトルの本を本屋で見つけ、すぐに買いま
した。
 金城哲夫という名シナリオライターの作品集でした。(朝日ソノラマ)
 金城さんは、ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブン、マイティジャック,怪奇
大作戦、帰ってきたウルトラマンなど、数々の優れた作品を担当されました。
 金城さんの担当された作品は各シリーズの中でも群を抜いたできであり、決して単な
る娯楽作品に止めませんでした。エンドタイトルが終わった後にも余韻が残り、人とは
なにか、自然とはとか、宇宙とか、正義とは、などなど、普段考えないことを考えさせ
てくれたのです。

 若い人には馴染みがないでしょうが、再放送もされたので、御存知の方も多いかもし
れません。
 ちなみに私が好きだった金城さんの作品をいくつかピックアップしました。

「ウルトラQ」
 マンモスフラワー,ガラダマ,ガラモンの逆襲,1/8計画,2020年の挑戦,
 南海の怒り,206便消滅す
「ウルトラマン」
 ウルトラ作戦第一号,バラージの青い星,怪獣無法地帯,オイルSOS,地底への冒
 険,まぼろしの雪山,さらばウルトラマン
「ウルトラセブン」
 姿なき挑戦者,緑の恐怖,狙われた街,ノンマルトの使者,史上最大の侵略
「マイティジャック」
 爆破指令
「戦え! マイティジャック」
 希望の空へ飛んで行け!
「怪奇大作戦」
 人喰い蛾,白い顔

 種明かしをすると、現在の私の作品の全ての根底には、この金城氏の人間性を追求し
た作品のイメージがあるのです。
 いつかこの人の作品を超えてやろう。そんな大胆な気持ちが無いでもありません。
 残念ながら金城さんは昭和51年2月26日に不慮の事故でこの世を去られました。
 私が「ノンマルトの使者」の本を本屋で見つけ、読んだ日、それが昭和63年2月
26日でした。
 全くの偶然ですが、十三回忌に金城さんのシナリオを読み、感動しています。
 この本の後書きの中で竹内 博氏がお持ちの金城さんの創作ノート12冊の話が出て
きます。ウルトラの製作担当当時のノートです。
 そのノートには次のようなメモがあるとのことです。
「新鮮な素材! 完全なプロット! 意外な結末! さわやかな感動!」
 それこそ、私が目指しているものなのです。

 金城哲夫さん、私は今、二十年の時を越え、あなたを追っています。
 追いつくことも追い抜くこともできないかもしれません。
 でも、あなたの作品を見た子供達が、この世界に生きて、あなたを目指していること
を信じてください。
 今もあなたのファンは数多くいるのです。
 安らかに。
                             昭和63年2月28日
                               コスモパンダ




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