#669/1850　ＣＦＭ「空中分解」
★タイトル (FEC     )  88/ 1/ 8   7:29  ( 17)
とはいってもねぇ                      ひすい岳舟
★内容
  この間のことだ。
  いくら、時代がそういう風潮があるからって、新宿・きのくにやの混雑さではＥ電
並みの文庫本“早川ＳＦ”でスカウトするこたぁ、ねえじゃねぇか。しかも「ねえ、
そこの文士、本だしてみない？」である。馬鹿野郎、竹下通りをあるっている女じゃ
ねぇんだ、アイドルみたいにスカウトしやがって、と怒鳴ろうとしたが、多くの人が
うごめく手前ちょっとにらんだ。しかし、この相手にやにや笑って手招いている。し
ょうがねぇ、と思ってレジの向うの通路にでた。俺が、何か言葉を２、３発放ってや
ろうかと思っていると、さっきとはうらはらに相手は丁寧に名刺を出した。
  （株）ＦＵＭＩ、聞いたことないなぁ。ＦＵＭＩとは文のことなのであろうか？ま
ぁいい、別段乗る気でもないのだから。俺はそれを床に捨てるととっとと出てってし
まった。

  男は名刺を拾いながら、消えたお目当ての子供を見えるかのように群衆を眺めてい
た。
  「とはいってもねぇ………紙で出版されると知ってたら飛び付いただろうねぇ。」
  ２０７３年、森林厳戒管理法が結ばれたあとの出来事であることを書き加えておく。
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