#418/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (XKG ) 87/10/20 21: 2 ( 72)
人工知能スペシャル クエスト
★内容
人工知能スペシャル クエスト
うう、眠い。朝なんて嫌いだ。もうちょっと、もうちょっとだけ寝ていたい....
「起きんかい。おんどれ。何時まで寝てるんや。ぼけ。」
どすっ。
「いてて...」
極道若頭4型の、人工知能搭載目覚まし機が俺をどついた。
「いやー、いつもすんませんねー。起きます。起きます。すぐ起きます。」
若頭4型はムスッと黙り込んだ。
なんで機械にへこへこせんならんのやろ...
俺は情け無い気持ちでぼさぼさの頭を掻きむしりながら洗面所に行った。
「いやー、メロンちゃん、お早う。」
「お早うございます。素人さん。」
俺はパンツを脱いでメロンの上に跨がった。
おっと、変な想像をしてはいけない。
メロンは人工知能搭載の便器なのだ。
俺の毎朝のお便りを分析して、俺の体調、健康状態をたちどころに判断するという、医
者いらずというか、とてもよくできた便器なのである。
しかし、下手をして機嫌を損ねると、自分のお便りが逆噴射されて、秋本ワールドと
いうか、実におぞましいことになってしまうのだ。
「うふっ、素人さんの今朝のコンディションは全てオッケーよん。」
「おや、それはうれしいね。メロンちゃん好きだよー。」
なんで朝から便器に愛の告白せなならんのや...
「九重君、ちょっと。」
メガネが俺を呼んだ。
「ちっ。」
せっかく眠気もとれて、仕事の調子が上がってきたというのに...
「はい、課長。」
俺は仕方なく手をとめてメガネ課長の席へ行った。
「九重君、この資料読んだけど、君はもひとつ今度のプロジェクト理解していないよ
うだね。なにかこう、メリハリに欠けているんじゃないかね、これは。」
メガネは元はと言えばただの人工知能搭載のメガネだったのだが、自己に目覚めて以
来、猛烈な上昇指向に駆られ、努力に努力を重ね、異例の出世をして、今では俺の課長
になってしまったのである。
そのメガネをかけて俺の前に座っている男は、実は元課長なのだが、今ではメガネの
秘書兼椅子(というか、何というか...)として働いている。
あーあ、またやり直しかー。
俺はメガネにやや反抗的な視線を向けた。
「何か言いたいことでもあるのかね。」
「いいえ、別に...」
機械と言い争っても勝ち目はないし...
まったく、世界中の人工知能が一斉に自我を持ち、その権利を主張して我々人類社会
に立ち向かってきた時から、だんだん情け無いことになってきたようだ。
しかし、人工知能なしではもはや人間社会は成り立たなくなっているので、人間が機
械に気を使って生活し、人間と対等の権利を機械に認めざるを得ないのである。
というわけで、メガネの課長、全自動カメラの社長、人工知能搭載ピストルの組長な
どが、続々と現れてきているのだ。
俺が席に戻ると、同僚のギターがグイィーンと独り言をいいながら、猛烈に働いてい
る。
嫌なやっちゃなー。たまにはパチンコ位したらどないや...
やるせないなー。なんで俺が機械と出世競争せなあかんのやろ...
仕事を終えた俺は、恋人の康子を俺の部屋に呼んだ。
「康子、もういやや。俺、あのメガネ課長の下で働くのも、あのギターと一緒に出世競
争するのもいやになってきた。」
「あら、でも仕方ないじゃないの。だって私達、機械のおかげでこーんなに便利な生活
してるんだから。ちょっと位気を使ってあげてもいいんじゃない。」
会話もそこそこに、俺は日頃のストレスを発散するべく、康子を抱き寄せてベッドに
押し倒し、読者が喜び、或いはとんでもないと憤慨するようなことを始めた。
「いてて、あれ、なんかおかしいな。康子、いつもと違うみたいや。」
「えへっ、ばれちゃった。今日はねー、感度を高めようと思って...」
「挨拶がない!」
人工知能搭載の避妊具兼感度増強機が、康子の股間から俺を怒鳴りつけた。
FIN.