#348/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (HRJ ) 87/ 9/19 23:45 ( 63)
「CHANCE」 ウイングマン
★内容
「CHANCE」 ウイングマン
冴子さんは、2週間前に、僕達のクラスに転校してきた。もう、千穂たちのグループ
にとけこんだようだ。何やら……
あ、これは失礼。自己紹介、しますね。
僕の名は、美森禎夫。毛南中学校3年3組20番。席は、いいことに一番うしろ。も
ちろん、まだこのクラスになって2週間だから、出席番号順で並んで、たまたま後ろに
きたんだけど。いや、しかし、後ろってのは、いいもんだ。
もう、あと5日前後で、クラス全員、顔と名前が一致しそうだ。それに、いつも冴子
さんの顔も、見られるし。
それにしても、楽しそうにおしゃべりして…これじゃ僕が入りこむ余地なんて、なさ
そうだな……。
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久しぶりです。何十日ぶりですね。
実は昨日、遠足があったんですよ。山のぼり。
チャンスだった…カメラをもっていって、ひとつ、冴子さんを撮ってしまお…と思っ
てたんだけど、友達と遊んだり騒いだりしてたら、なんとなく時間が過ぎてしまって…
こういうときって、親友が悪友に見えるぜ、まったく……。
しかし、僕って、ついている。電話したんだ、思い切って。声を聞くだけで、良かっ
たんだけど、ちょっと、言ってみたんだ。「…あ、のさ、遠足で余った写真で、冴子さ
んを撮りたいんだけど…。」一瞬、「余った、なんて言って気を悪くするかな…」とか
思ったけど、しばらくして、「いいよ、ちょうどヒマだし。あと5分くらいしたら来て
くれる?」…やったね、の一言。というわけで、今、出掛けるとこ。おっと、2分も超
えてしまった……。
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わっ、かわいい…。彼女は、…う〜ん、ショートカット、でいいのかな、中ぐらいの
髪の長さで、前髪はノーマル。しいていえば、オカッパみたい。けっこうふっくらとし
た顔立ちで、目はくりっとして…、
「こんな感じで…いいかなァ?」
あっ…鼻血がっ…あぶない、あぶない。
「…な、なんか、はなし…しながら撮ろっか。」
とりとめのない話をしながら、あまっている、といいつつ36枚しっかり入っている
カメラで、撮りまくった。
…ときどき、困ったような顔をして…。彼女が突然、「あ、あの…」「…えっ?」
パシャッ。パシャッ。彼女のわずかな声に耳を貸しつつ、かなりのハイペースで撮
る。興奮気味に…。
「いや、…いいの。」
「アハ、表情豊かで…モデルやってたみたいね」
「…うふっ…」
…興奮さめやらぬうちに、フィルムがなくなった。
「また…」「えっ?」
「…また、撮ってね、きっと。」「ああ、ありがと。」
気分よく去った。笑いがこみあげて止まらない。
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彼女は、とっても、内気なのである。今、手元の写真を見て、やっと、わかった。
はじめは、どっかの雑誌か何かで、モデルの経験でもあったのかと思った。やーやー
と、ヘンな想像までしてしまった。でも、あの困った顔は…。
みなさん。
カメラを写すときは、キャップを取りましょう。
ちくしょー、一眼だったらなぁーー。
おわり