AWC リレーB>第11回   試練    KARDY


        
#346/1850 CFM「空中分解」
★タイトル (UCB     )  87/ 9/18   0:44  ( 48)
リレーB>第11回   試練    KARDY
★内容
 その不安さが、僕に剣を握らせた。 殺そうとしたんじゃない。 ただただ不安だ
ったんだ。 僕は知らないうちに腰を沈め、パームに向かい、賢者の剣をかまえてい
た。 が、剣の輝きが、パームの髪の輝きとぶつかり合った様に見えた瞬間、
「な、何だ? たった今まで紙みたいに軽かったのに…!」
 いきなり、手首にズシリとした重みを感じた。 いや、剣自体が重くなる訳がない。
どちらかというと、まるで地球ゴマを握った時のような、異様な感触と言うべきだろ
う。 賢者の剣は、僕を認めたくせに、言う事を聞こうとしない。 いったい、何が
どうなっているんだろう? 僕は訳が分からないまま、あせって剣を振り回そうとし
ていた。 パームは横を向いて、一つため息をついた。 横顔がババさんのそれに重
なって見えたのは、たぶん僕の欲目というものだろう…。
「これで分かった? 賢者の剣は、身を護る為のものじゃない。 『鬼門の門』を、
全員が無事に通る為の指標になる時に、最高の力を出す事が出来るのよ。 今からそ
んな事じゃ、門をくぐるなんて、夢のまた夢みたいね。 いいこと? あの門はいつ
でも開いてるって訳じゃないのよ! 本当に賢者の剣を使いこなそうって気があンの?
アンタには何かが欠けてる。 経験なんかじゃないわ。 もっと違うもの。 思い出
すのよっ! そうすれば、アンタを仲間と認めてあげたっていいのよ。 さあっ!」
「じょ、冗談じゃない。 いきなりそんな事を言われたって、分かる訳ないじゃない
か! そんなにぐだぐだ言うなら、自分でこの剣を使えよ!」
 はっきり言って、僕はこの時、完全にパームに押されていた。 かろうじて返した
言葉も、苦し紛れに過ぎない。 金切り声でわめかれるんならともかく、ドスのきい
たテノールなんだからたまらない。
「アンタだけじゃなかったわ。 ジャンが連れてきた連中ときたら、みんなスミを抜
かれたタコみたいに情けないのばっかり!」
 何がどう情けないのやらは考えるよしもなかったが、ここまで言われてはもう我慢
がならない。 張り飛ばしてやろうと思った瞬間、
「囲まれている!」
と、ジャンさんの声が聞こえた。

 「そいつ」は、全部で6匹いた。 この世のものとは思えない不気味な姿が、ジャ
ンさんの持つライトの放つ光に染まっている。 みんな同じ格好をしていながら、足
元にはいずり寄ってくる奴、空中をゆっくりと漂っている奴、壁にへばり付いてスキ
をうかがっている奴と、顔に似合わずなかなか器用だが、感心する気にもなれない。
 僕とパームは、ふたりっきりで完全に囲まれていた。 警告を発した当のジャンさ
んは、包囲の輪の外にたたずんでいる。
 だが、ジャンさんが逃げたんじゃなかった。 これはもちろん後で知った事だが、
パームがわざと大声を上げて「ジリジリと」移動し、怪物達をおびき寄せていたのだ!
僕もパームにつられて移動していたから、使いなれない剣で望まない戦いを強いられ
る事になったのだ!

 すさまじい恐怖感が僕の体内を駆け抜けて、頭の中で音もなくはじけた。 そして、
真っ白になった視界のなかに浮かんできたのは、山小屋で会った人、ババさんの姿だ
ったのだ。
 恐怖を忘れ、僕は心でババさんに問いかけた。 ババさん、あなたは言った。
「***と引き換えに占ってさしあげます…」
パームの言った、「欠けている何か」とは、その事なんですね。 いったい、あなた
は僕から何を奪っていったんですか…? こいつらと戦えば、取り戻せるんですか?
                           *** つづく ***





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