#3282/3573 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 24/11/15 16:45 ( 38)
ミステリ作家のタイプ 永山
★内容
ジャンルとパターン>
大前提として、ジャンルに重きを置くのかパターンに重きを置くのかについて、書き
手の資質・得手不得手があるかもしれませんが、その辺りは判断が難しいので横に置く
としましょう。
最近の傾向と言っていいのかどうか分かりませんが、ミステリに馴染みのない読者層
にも“刺さる”可能性がより高いのは、パターンの方かなと感じる昨今。こう考えたの
には、言うまでもなく(?)、『十角館の殺人』(綾辻行人 講談社ノベルス他)のプ
チブレイクが念頭にあります。“衝撃の一行”“すべてがひっくり返る”なんて謳われ
れば、大なり小なり興味を持つものだと思います。初めて刊行されてから三十年以上経
って新たに話題にのぼるというのは、作品自体が優れていることや「映像化不可能と言
われていた」ことも大きいでしょうが、どんでん返しというパターンの売りが、一般に
響きやすいというのも一因に数えていいと思われます。
これがジャンルの方、たとえば“本格医療ミステリ!”と惹句で言われても、興味を
抱く人はそんなに多くはなさそう。普遍性というか、興味の対象とする人の数が明らか
に限られてくるだろうから。
もう一例挙げるとすれば、ご存知かもしれませんが、『方舟』(夕木春央 講談社
)。最初にハードカバーで出たのは二年前。これも一種のどんでん返しが評判のミステ
リで、先頃出た文庫版にて有栖川有栖の記した「この衝撃は一生もの」という惹句も効
いたのか、再び話題になっているみたいです。やはりどんでん返しのパターンは強いと
言えるんじゃないかと。
ただ、得意のパターンを売りにしていると、読者がその内慣れてきて、展開を想像だ
けで看破される恐れが高まってくるでしょうね。“叙述トリック”を看板にした作家さ
んも、同様。まあ、仕方がないことかもしれませんが、できれば避けたいものです。
その点、得意ジャンルの方は、慣れたから見破られ易くなるとは限らないと言えまし
ょう。極端なこと言うと、ある専門的な分野を得意ジャンルとしていれば、毎回、新た
な専門知識をぶち込んでいくことで、ほとんどの読者は「はあ、そういうことがあるの
か、初めて知った」と感心するほかない訳で。
そんなこんなで、より広く読まれる可能性があるのは得意なパターンがあるタイプ
で、より長く書き続けられそうなのが得意なジャンル(専門分野)を持ってるタイプと
なる……のかな? 得意なパターンについでの分が、“どんでん返し”と“叙述トリッ
ク”という、かなり近い意味合いのものでしかしていないので、当てはまらないケース
がいくらでも出て来るかも。
ではでは。