AWC 視点のぶれ、そして誤記   永山


        
#2492/3686 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  22/11/20  16:43  ( 37)
視点のぶれ、そして誤記   永山
★内容
 ミステリの連作短編集『可制御の殺人』(松城明 双葉社)の評判を知り、図書館か
ら借りてきて(^^;読み始めたのですが、冒頭から数ページで躓いてしまいました。
 まず、同書11頁及び12頁から引用。真凜と千冬、二人きりで会話しているシーン
で、間に十一行挟んでいます。その間、場面転換等はなし。

>>「部署によるけど、そこまでじゃないって――」
>> と、真凜はすんでのところで、「啓太郎くんが言ってたよ」という言葉を呑み込ん
だ。

>>真凜は話題が変わったことにほっとしたのか、無邪気な笑みを浮かべた。


 二つを比べて、どう感じるでしょうか。
 上は、真凜の心理に立ち入っているから、真凜の視点を採った三人称。
 下は、真凜の心理を外から見て判断しているから、真凜以外の視点を採った描写。
 明らかに別です。この短い間に、場面転換なしに描写視点がころっと変わるなんて、
作者や編集者は大丈夫か、他の作家がこれを激賞したってのも信用していいのか?と疑
問を覚え、しばし読むのをストップ。
 一日ほど空けて、最初から読み直し、問題の箇所は気にせずに進もうと思っていたの
ですが。
 詳細は省きますが、改めて読み直すと、そもそも、

>>「部署によるけど、そこまでじゃないって――」
>> と、真凜はすんでのところで、「啓太郎くんが言ってたよ」という言葉を呑み込ん
だ。

 の台詞をしゃべったのは真凜ではなく、千冬であるとの判断に到ります。
 つまり、台詞部分の次の行は、「と、千冬はすんでのところで〜」とすべきなのを、
誤って「真凜」になったと考えられる。
 そう解釈することで、当初引っ掛かりを覚えた視点のブレは解消されます。だからと
いって、よし、とはなりませんが、とりあえず理解は出来て一安心。

 このあと、第一話を読み終え、なかなか凄い試みをしているミステリだと感心したで
す。続き物としてどう展開させるのか、興味津々。
 それだけに、冒頭間もなくの誤記(多分)がもったいない。

 ではでは。





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