#2474/3685 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 22/11/08 19:17 ( 54)
では私も読んで感想を 永山
★内容
『ルナティック・レトリーバー』、私も電子書籍サイトにて、クーポンを利用して一
割引きで購入済みでしたが、読むのはしばらくしてからにしようと思っていました。あ
んまり早く読むと、悔しさのあまり、揚げ足取りに力が入ってしまいそうなので。(^^;
結局その予定を変更して読んだため、揚げ足取りが強めになるかもしれませんが、割
り引いてくださいませ。※ネタバレ注意!
まずはトリック以外の部分。
序盤に「どんでもない失態」と誤字が出て来るのは、電子書籍版は速報性を優先して
いるのかしらん。
部分日食を“世紀の天体ショー”と形容するのは違和感がある。世紀のと言うからに
は、どんなに頻度が高くても五十年に一度ぐらいに収まっていてほしい。ネットでざっ
と検索すると、部分日食を含めた日食は、2002年から2047年までの四十六年間
に二十一回、日本国内で観ることができるらしい。さらに言えば、その程度の天体シ
ョーを、今どきの若者が我も我もと繰り出して観に行くとは考えづらいかな。
サイコパスという単語の使い方も、何かちょっと違うような。原語の意味としては合
っているのかもしれないけれども、日本語には日本語なりの語感がある訳で、「この程
度でサイコパス?」って疑問に感じてしまう。物語の後半で、サイコパスぶりが活きて
きますが、それならなおさら、前半でもっとサイコパスぶりを明示する必要があったと
思う。他人から見た感想でしか語られていないから、ほんとにサイコパスなのかどうか
分からないのが難。
そしてトリック。
捨てトリックの方は、舞台設定が特殊すぎてずるいんだけど、発想は凄く面白い。た
だ、この仕掛けって、一人で操るのは大変だろうなー。仕掛けを作ったあと、どうやっ
て脱出するのかも興味ある。
犯人が使ったトリックは、確実性の面で現実味が薄く、文章でどうにか成り立つよう
信じ込まされた感じ。被害者が外部への連絡手段を持っていなかったのかという点も曖
昧で、もし持っていなかったのなら不自然だし、仮に携帯端末の類を身に付けていなか
ったとしても、この殺害方法だと犯人の名前を現場に残す可能性があった。ならば犯人
は何としても第一発見者になって、その痕跡の有無を確かめずにはいられないはずなん
だけど、そこまで考えが回らなかったのか、第一発見者にはなっていない。
そういった欠点を補って余りある魅力が本作にあるとしたら、それはその詰め込み具
合でしょう。決して長くない短編に、これでもかというくらいに趣向を取り入れ、ミス
テリの物語としてジェットコースター的展開を魅せてくれている。
と、ここまでが、朝霧さんの感想を読む前に書いたもの。
以下が、感想を読んでから考えたり調べたりしたこと。
首を捻ったのが、米澤穂信氏の言うトリックがどの作品について言っているのか分か
らなかったこと。『八点鐘』を読んだのが遙か昔なので一応、調べてみましたが、やは
りぴんと来ません。物凄く拡大解釈してみても、「独創性に欠ける」とまでの批判を受
けるものではないと思えるのですが……。
ツイッターで検索してみると、受賞作は出版に際して大幅改稿されたんじゃないか説
を唱えている人がいました。元々は『八点鐘』の「水瓶」のトリックが使われていたの
ではという見解。だとしたらしっくりくるんですが……受賞作のトリックを丸々別物に
するような改稿が行われたんだとしたら、出版時にその旨を当然明記するとも思えるの
で、ちょっと考えにくいかなあ。
個人的には、被害者を操って鍵を掛けさせるというトリックは、ミステリ漫画「Q.
E.D. 証明終了」のとあるエピソードを連想しました。それとてシチュエーションが
まったく異なり、“同じトリック”ではないです。
てな具合ですので、主催社か選考委員からの詳しい説明があればいいなあ、と思った
次第です。
ではでは。