#2403/3592 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA ) 22/09/23 19:27 ( 36)
古くて参考にならない感じ 永山
★内容
BS12で放送の二時間ドラマ「逃げ口上」を録画視聴。ネタバレ注意です。
初回放送は二〇〇二年。第二十二回横溝正史ミステリ大賞のテレビ東京賞を獲得した
作品とのことで、現在の横溝正史ミステリー&ホラー大賞の参考に多少なるかなと観て
みたのですが……うーん? 既存の二時間サスペンスだとしても決していい出来とは思
えず。原作から大きく変更されたのかなと調べてみたところ、どうやらテレビ東京賞を
獲っても書籍化されるとは限らないようで、出版されていないみたい。小説の形で世に
出てないのだとしたら比較のしようがない。とりあえず、このドラマの内容イコール原
作小説と見なします。
バス爆発事件で、七人が犠牲になり、各人の遺体はばらばらに吹き飛ばされたという
ことでしたが、身元確認が非常におざなり。DNA鑑定の技術は導入されているみたい
なのに、ちゃんとやっていない。そのおかげで犯人の計画がうまく行く(行きかける)
のだから、ご都合主義の匂いが。ここは、犯人自身のDNAを採取する物に細工を予め
しておき、身代わりの人物のDNAが採取されるようにしておくといった工夫をしてし
かるべき。
土壇場に来て善玉が悪玉にコロッと寝返るのは、作劇の流れとしてどうかと思う。幼
い子供のぜんそく治療のため引っ越して家を買う必要があり、それにはお金がいる、な
ので誘いに乗った――ってな背景が終盤に一気に語られるのですが、ここで肝心なのは
簡単に寝返った理由でしょう。一般人ならともかく、正義感の強い刑事が心変わりする
には、もっともっと切迫した事情がないといけない。
目的達成のためには、無関係の人間が巻き添えになってかまわないという思想の犯人
は、ミステリには比較的向いてないと常々思っています。いかに狙った人物のみを葬る
かに腐心してこそ、ミステリ、特に本格推理の犯人だと言える。誰某に復讐したい、よ
しそいつの乗っている飛行機を墜落させよう、だと成り立たない。この観点から言っ
て、本ドラマの犯人はミステリの犯人はふさわしくない。
全体に事件の構図が見通し易いのも、ミステリ的にはマイナス。ヒント・手掛かりが
露骨すぎて、登場人物が愚鈍に見えてしまう。
殺しの濡れ衣で警察を懲戒免職になった元刑事という設定自体は面白いが、それが物
語に充分に活かされていたとは思えない。むしろ、冤罪が晴れていない状況なのに警察
署はおろか、捜査本部のある部屋にまで入っていけるのが奇妙に映る。
その元刑事にくっついて一緒に探偵する、被害者遺族の女性というのも、少々自由す
ぎる設定かなあ。弧の描き方・使い方であれば、元刑事の妻(夫の無罪を信じて別れて
いない)を相棒役に据えた方が、すっきりしたのでは。
結局、派手なバス爆破シーンがあったからテレビ東京賞(きっと映像化を強く意識し
ていると思う)に選ばれたんじゃないの?って勘ぐってしまいました。
ではでは。