AWC 本の感想>『名探偵は嘘をつかない』   永山


        
#1991/3580 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  21/11/03  19:35  ( 40)
本の感想>『名探偵は嘘をつかない』   永山
★内容
・『名探偵は嘘をつかない』(阿津川辰海 光文社文庫)13/4441
※ほんの少しだけネタバレ注意。

 探偵が警察を補う資格職業として機能している世界。名探偵だが傲慢で知られる阿久
津透は、ある連続見立て殺人の捜査において、唯一人の助手・火村つかさの兄で刑事の
明を犠牲にすることで犯人逮捕の決め手を掴んだ、との疑いが生じた。調べてみると過
去にも同様に疑わしい事件が複数あり、もしそれらが疑いではなく事実だとすれば探偵
の資格を剥奪されて当然と言えた。かつて少年時代の阿久津にはめられた刑事の黒崎
が、阿久津を探偵弾劾裁判に掛けようと動いており、阿久津の助手を辞したつかさはこ
れに協力する。
 阿久津透は真の名探偵なのか否か? 裁判の行方はいかに。

 新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」第一回受賞作で、大幅に改稿されているとの
こと。
 最初に述べた粗筋はまだほんのさわりで、入り組んだ展開を見せます。神様だの転生
だののファンタジーめいた設定も取り入れており、ある意味、ネット小説っぽいとも言
えるかも。書きっぷりは通常のエンターテインメントとライトノベルの混ぜ合わせって
感じかな。融合ではなく混ぜ合わせですが、それでもやはりいわゆるネット小説のイ
メージとは一線を画す感はあります。
 色々と詰め込んで、謎の設定にはそれなりに魅力があるし、ロジックも悪くない。意
欲作であるのは認めます。でも、何だかとっちらかった印象が強い。上で記したように
書きっぷりは混ぜ合わせで、ともすればちぐはぐだし、キャラクターの行ったことに対
する決着のさせ方には首を傾げるところがある。何よりも、殺人事件を扱うミステリで
転生の概念を持ち出したことにより、犯罪の形成があやふやになっているような。
 そういうモヤッとした点が多々あって、諸手を挙げて賞賛できる作品ではないと思い
ますが、切って捨てるには惜しい味わいがあるのも確かではないかしらん。

 前に指摘した足跡に関する推理の件は、そもそもが見せかけの推理でした。なので、
真相との照合はできないんですけど、見せかけの捨て推理だからといって、その齟齬を
他の登場人物が誰も指摘しないのはやはりおかしい訳で。

 あと、特に序盤で顕著だったと感じたのが、読んでも読んでも情景が浮かんでこない
のがちょっとつらかった。犯罪が起きた描写が続くんですが、第一発見者と被害者のこ
とばかり書いて、どんな場所でどれくらい人がいて、その直前の状況はどうだったかな
どが欠けているため、想像の膨らませようがない。情報を隠すことによる叙述トリック
だったなんて仕掛けもなく、ただただフラストレーションが溜まった。これらも改稿し
て欲しかったなと。(^^;


 ではでは。とりあえず一冊読破。(^^)





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