AWC 本の感想>『「不要」の刻印』   永山


        
#965/3573 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  19/05/17  19:57  ( 32)
本の感想>『「不要」の刻印』   永山
★内容
・『「不要」の刻印』(本岡類 光文社ノベルス)11/4340
 若き棋士で警察の捜査に協力した功績もある、将棋の水無瀬翔五段は、バイクでドラ
イブ中に事件に巻き込まれる。走行中に転がってきたボストンバッグ。拾って中身を確
かめると札束が詰まっていた。何事だと考える間もなく、男らに取り押さえられてしま
った。事情聴取で、自分が幼い子供の誘拐事件の犯人と見られており、偶然にも身代金
受け渡しの場に通り掛かり、偶然にもバッグが仕掛けから落ちてしまったらしい。さら
にさらわれた子供の父親は、後輩の元棋士が働いている職場の社長だというおまけ付
き。
 どうにか疑いは晴れたが、誘拐事件は未解決。後輩を通じて水無瀬の探偵能力を聞い
たとのことで、子供の両親から事件解決に手を貸して欲しいと依頼される。棋戦の予定
もあって一度は断ろうとしたが、結局は引き受けることに。その後、殺人が発生し、何
と後輩が容疑者として捕まった。酒に酔っていたとかで記憶の無い後輩は、今にも犯行
を認めてしまいそうだという。
 水無瀬翔物の最高傑作との評判を呼ぶ、シリーズ第四弾。

 カバー折り返しに、著者の言葉として、“心配があるとしたら自分はこれ以上の本格
推理はもう書けないのではないか”という風な旨が記してあるので、物凄く期待値を上
げて読みました。
 ……上げすぎました。
 好みを言えば、同じ作者の昔の諸作品の方がよっぽど面白かった。いかにも本格ミス
テリらしい謎の設定とトリックが用いられ、遊び心があった。
 本作は、トリックやストーリー運びに現実味を持たせる一方で、遊び心はがくんと減
った結果、肌に合わなくなった感じ。
 もちろん、そんなことのみでこの手の作風を否定するつもりはありません。本作は、
探偵役の捜査が空振りに終わる流れが多く、読み進めても物語の展開や深化をさして感
じ取れず、退屈さとストレスが増すばかり。終盤に来てやっと探偵作業が実を結び、解
決に向けて一直線という感じがして、上げ底みたいな構造に思えたんですよね。その点
もマイナスイメージが付いてしまいました。
 作者が二つのセールスポイントとしていた内、殺人のトリックの方は今ひとつ。誘拐
の理由に関しては、なかなかよかった。

 ではでは。





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