AWC その後のそして誰もいなくなった   永山


        
#25/3580 ◇フレッシュボイス2
★タイトル (AZA     )  17/04/04  20:29  ( 34)
その後のそして誰もいなくなった   永山
★内容
 テレビ朝日系で二夜連続放送された「そして誰もいなくなった」を録画視聴。ネタバ
レ注意。
 原作との時代の差異をそれなりに消化しつつ、そして所々を和風に置き換えつつ、十
人全員が死ぬまでの展開は、意外と原作に沿っていたかな。数え歌の歌詞に手を加えた
のは、よかった。一方、ドローンは違和感あり。荷物を運ぶ船が定期的に行き来してい
るのに、新聞を四日分まとめて届けるためだけにドローンを飛ばすのは、コスト的に見
合わないだろうし、性能面でも厳しいのでは。
 今回のドラマ化で一番の改変は、後半になって乗り込んできた刑事が謎を解くこと、
でしょう。原作やこれまでの映像化作品では、犯人の独白により真相が分かるという線
を崩さないでいたように思います。本作ではそれを破るというので、非常に注目してい
たのですが、本格推理らしい謎解きにはちょっと届かなかった感じ。刑事を演じた役者
は、その名探偵ぶりを出そうとしてか、奇人変人の味付けをしたみたいですが、捜査手
法は警察のそれと大差がないので、名探偵のイメージよりも、名刑事のイメージに近か
った。

 もう一つ、目玉となるのは(結果的に目玉となったのは)、渡瀬恒彦の遺作となった
こと。かつ、渡瀬恒彦演ずる役柄が、末期癌を宣告された元判事だということ。
 本作は、原作を知っている人なら、役柄を聞いただけで犯人が誰なのか分かるほどに
強いインパクトのミステリですから、最初に渡瀬が元判事と分かった時点で、え、よく
引き受けたなあと感じたです。そこの驚きは確かにあった。
 ただし、その驚き――役者としての精神力や胆力などから観る側が受ける驚きと、実
際の渡瀬の演技を高く評価することとをイコールで結ぶのには、ちょっと違和感もしく
は躊躇を覚えます。
 癌患者役を演じた役者に対し、その役者が癌患者であることを知った上で称賛を送
る。果たしてそれは褒めていることになるのか。むしろ逆で、役者に対して失礼に当た
るのでは。経験を演技に活かすのは、役者にとって特別なことではないのだから。
 加えて、抑えきれない殺人衝動という動機に説得力を持たせるのは、犯人が不治の病
にかかっていても承服しがたく、難しいものです(犯人役を演じた俳優が不治の病であ
っても、そこは同じ)。殺人衝動ではなく、強烈な処罰感情を強調すべきだった気がし
ます。刑罰を逃れて日常生活を送っている殺人犯達にどうしても罰を下したい、だが自
分の命はもう何年ももたない、だから殺人という手段に打って出た、という流れならま
だ理解し易くなったのではないでしょうか。

 ではでは。





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