#1142/1158 ●連載 *** コメント #1141 ***
★タイトル (sab ) 22/09/23 12:18 ( 73)
ニューハーフ殺人事件6 朝霧三郎
★内容 22/09/29 13:13 修正 第3版
副題:何で「愛と誠」の岩清水弘は死にたかったんだろう?
コバとカトーちゃんがその日の夜8時から60通り店と芸術劇場前店で張り込み、
深夜12時頃に芸術劇場前店にターゲットのホームレスが現れたところを、
任意同行を求めて、署にしょっぴくと即取り調べとなった。
ミツさんは便所にいた。
(あれだけ下剤で洗浄したのにまだ便が残っている。
これじゃあアネロスなんて使えないな。
あのアネロスは2日ぐらい断食しないと清潔に使えないんじゃないか。
或いは健康なうんこがでて直腸が空洞になれば平気なのか)
そんな事を思いながら便所から出てきて取調室に行ってみると、
明子巡査が耳打ちをした。
「変な事言っています。頼まれたって」
コバとカトーに変わってミツが取り調べをした。
コバは「ちょっと俺は検視の結果を聞いてきます」と言って部屋を出て行った。
「頼まれたって金でか」ミツさんはホームレスの前に座ると言った。
「はい」
「いくらで?」
「十万円」
「その金、今持ってんのか」
「財布の中にありますよ」
「見せてみろ」
ホームレスが財布を出すと取り上げて中身を見た。
クレジットカードを引っ張り出す。
「このクレカはお前のか」
「いえ。それは頼まれた人ので。使えると思って」
「明子ちゃん、これ、誰のか調べてくれ」ミツは言うと明子巡査に渡した。
更に財布の中を捲ると、ガイシャの免許証まで出てきた。
「こんなものまで引っこ抜いてきたのかよ」
免許証の住所氏名は
『埼玉県上尾市壱丁目**コーポマンディ202
橋久吉』
免許証の写真はその場で写メして捜査員に共有された。
「これじゃあ、ガイシャになりすましていると思われてもしょうがないぞ」
言うとミツはホームレスの顔を睨む。
「その目はどうした」
ミツはホームレスの革のアイパッチを指差した。
「へい、生まれつきで」
「そんで砂土谷の恰好しているのか」
「サドヤ?」
「「愛と誠」の」
「知りませんね」
「じゃあ、そのレザージャケットはなんだ。
前は菜っ葉服を着ていたっていうじゃないか」
「これは柳沼さんがくれたんですよ」
「ガイシャかあ。他には」
「そういえば、死ぬ時にこう言っていました。
「早乙女愛よ、ボクはきみのためなら死ねる」」
「え?それは二巻の岩清水弘の台詞だなあ。
実際にリンチにあって死にそうになるのは八巻だが。
ガイシャは大賀誠になりきっていたんじゃないんですかねぇ。
どっかで混乱があるのかなあ。
結局、太賀誠も最後には死ぬんですけれどもねえ。
きみのためなら死ねる、っていうのは岩清水弘ですからねえ。
ガイシャは死にたかったのかなあ」とカトーちゃん。
「そうですよ、オレは頼まれただけでなんです。
刃物を構えて立っていろって。それで向こうが勝手に飛び込んできたんです」
「なんの為にそんな事するんだよ」とミツさん。
「そんなのあっしに聞かれても」
「岩清水弘って何で死にたかったの?」ミツさんはカトーの方に言った。
「さぁー」
「それが分かればガイシャの柳沼なる人物が何故死にたかったのかも
分かる気がするな」とミツさん。
検視を見に行っていたコバが帰ってきた。
「検視の結果、やっぱり、あの右わき腹からのナイフが致命傷との事です。
あと、こんなのが出てきました」
コバは証拠品袋をひらひらさせた。
”大宮ハリウッド座 割引券”
「ミツさんちの近くですね。行った事あります」とコバ。
「むかーし、何回か行ったけれども、最近は」
本番まな板ショーがないので行っていない、という言葉は飲み込んだ。