#1056/1158 ●連載 *** コメント #1055 ***
★タイトル (sab ) 16/02/08 17:26 (258)
◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー4
★内容
キャンプ場に帰ると、カマドの横の、大きい石の上で、魚を下ろした。
まず、腸を出して、エラのところにナイフを入れて、さーっと横に引いて半身を取る。
裏返して又さーっと引いて半身を取る。
そうすると、頭と骨だけが残る。
「うまいじゃない」
「ガールスカウトでやっていたから」
しゃがんだまま背後のヒヨリを見ると、一人で芋を煮ているわい。ひひひ
ヒヨリを無視して、ミキを二人で、下ろした魚を棒に刺して、
炉端焼き風にカマドの周りに並べた。
焚き火の火力も、3日目とかになると、炭になった燃えかすが大量にあり、
炭火焼きの様になって、火力が強くて塩梅がいいのだ。
焼けてくると、脂が滲み出してきて、パチパチいった。
「醤油、垂らしてみな」
私は上の方から醤油を垂らした。
ぼわーっと火が上がった。
ウオオオぉー。
「そろそろいいかもしれない。ヨーコ、一口いってみな」
私は一本を取り上げると焼きイカでも食べる感じで、がぶりといった。
「うめー。ぷりぷりだよ」
「どれどれ」言うとミキも食う。「おいしい。サバのみりん漬けじゃない。
塩でやれば塩サバになるかも」と言ってむしゃむしゃ食べる。
ヒヨリを見れば、芋の皮を剥いているではないか。
「ヒヨリもいい加減芋ばかりじゃあ干からびるよ」とミキが言った。
「いいの。放っておいて」と塩を振る。
『フルメタルジャケット』のスナイパーみたいになっちゃっている。
あんなになっちゃったら困るな、と、私は、むしゃむしゃ食った。
しかし、ふとミキを見ると、じーっと焚き火を見詰めていて、瞳に炎が映っている。
もしかして今、イケスでの事を思い出しているんじゃないのか。
私も炎を見詰めた。
「さっきはごめんなさい」私は言った。
「えッ。いいよ。…よくないけど」
「もう二度としないよ」言いつつ、がっくり頭をたれて 自分の股間を見た。
もしかしたら 腹が張るとちんぽも張るかも。
ハッとして、私は魚の串刺しを火の中に放り込んだ。
バーっと火の粉が上がった。
ミキがびっくりしてこっちを見る。
私は足元に転がっているナイフを拾った。
「なにする気」とミキ。
「ちょんぎってやる」私は腹を引っ込めてGパンのボタンに手をかけた。
「やめなよ」
「じゃあ、私にこれがあった方がいいの?」と私は自分の股間を押さえた。
「ぷっ」隣で芋を食っていたヒヨリが鼻で笑った。
「つーか、私にもそのちんちん見せてよ」
ムカつくー。
ヒヨリは更に、「オナベは人差し指が短いって言うじゃん。ちょっと見せてみな」
と言って、人の手首を掴んできた。
「離せよッ」と手を振り払う。
私は思いっ切り睨んだ。
ヒヨリは、意地悪そうな蔑むような目で見ていやがった。
「下山したら医者に診せればいいんだよね」とミキが何故かヒヨリに言った。
「それって婦人科? 泌尿器科?」とヒヨリ。
「性同一性障害の外来」とミキ
「そんなのあるの?」
「あるよ。埼玉医科大学に。性転換手術もやっている」
「へぇー。でもヨーコの場合、もう生えちゃっているんだから、
手術の必要はないんじゃない?」
なんで人の下半身で盛り上がってんだよ。
「無理だね」と私は呟いた。
「え、なにが」とミキ。
「そんな病院に行ってどうこうなる話じゃないんだよ。
ホルモンの問題じゃなくて染色体異常なんだから。
牛島、春田、斉木って、みんなおかしくなって死んでんだから、
私だって順番にそうなるんだよ」
「え?」
「私は斉木から聞いたんだ。
牛島、斉木、春田は
XYY XXY XXYY
で染色体異常で除草されたんだよ。
女子は、ミキ、ヒヨリ、私が
XXX、XX、X
だから、XXのヒヨリとXXXのミキが生き残るんだよ」
「私もおかしいの?」とミキ。
「そうだよ。でも、XXXなら子供も出来るから生き残るんだよ」
「なーんだ、私だけが正常なんじゃん」とヒヨリが勝ち誇った様に、
プハーみたいな笑みを浮かべた。
ムカつく。
「でも、誰にも相手にされないんじゃあ意味ないよ」と私は言った。
「は?」
「ミキは斉木に襲われたし、私だって、牛島、春田に襲われているんだ。
あんた誰にも襲われていないじゃん」
「それは、そいつらが奇形だから奇形を狙ったんじゃね?」
「ちょっと待って。今、私のこと、奇形って言った?」とミキ。
「言ってないよ。つーかヨーコが私だけが正常だって言ったんじゃん、
でも、正常でも意味ないとか、おかしくない?」
「お前が正常だとかいうのは斉木が言ったことで、
学校はどう思っているかは分かんないよ」
「なに、それ」
「こんな魚を食べさせたり、明日はと畜があるんだから、
そういうのみんな駄目じゃあ、そっちが除草されるかも知れない」
「除草? なにそれ。誰がやんの?」
「そりゃあ男子が除草されたのも、磁気とか何かの影響かも知れないし、
私にオチンチンが生えてきたのも、何かの影響かも知れない。だから私が」
私は目の前にあったナイフを握ると前に差し出した。
「あんたを刺したとしても何かの影響かも知れない」
「ちょっと、なにやってんの」とミキはなだめてきた。
が、ヒヨリはナイフから目を離さないまま腰を浮かせた。
そしてイチローみたいな感じで、じりじりと焚き火の向こうに回り込む。
そしてチラッっと脇を見ると、素早く、転がっているモリを拾った。
「なにやってんのぉー」
「ミキは平和ボケしているのよ」炎の向こうからヒヨリが言う。
「もう3人も死んでいるのよ。何時4人目が死んでもおかしくないじゃない」
自分の台詞で興奮したのか、炎の向こうからいきなりモリで突いてききた。
あぶねっ。
後ずさったら、踵に石がひっかかって、私は尻餅を付いた。
手を付いたところに、ちょうど魚の腸が捨ててあった。
私はそれを鷲掴みにすると、ヒヨリめがけて投げつけた。
「これでもくらえーッ」
顔からフルーツ・オブ・ザ・ルームのTシャツにかけて、べちょべちょっと、
へばり付く。
「ゲーっ!」ヒヨリはモリを落とすとTシャツの前に伸ばして飛び跳ねていたが、
脱ぎ捨てると顔の腸を拭った。
それからモリを掴むとこっちを睨む。
その形相が、血はついているわ、焚き火の炎に照らされるわで、すげー迫力。
しかもあんなに長いモリで突かれたら、こんな短いナイフでは応戦できないと、
今更分かった。
私は、不利と感じた。
だんだんと後ずさると、踵を返して、とりあえず去る。
「どこいくのよ」背後からミキが叫んでいた。
そんなの無視して、だーっと走って行って、湖畔の小道に出る。
そのまま時計回りに、タッタッタッーっと走って、ロッジも通り越して、
更に少し行って、右脇にそれている貝塚に至る坂道に入って行った。
そこを途中まで上ったところで、やっと止まって、キャンプ場の方を見た。
遠くから見ると、焚き火は100円ライターの火みたいに見える。
人の影までは見えないが、追いかけてくる様子はない。
空は既に夕暮れどきで、空の上の方は暗くて紫で、
そこまで焚き火の白い煙が立ち上っていた。
どうしようか、と思った。
途中にロッジが見えるが、あそこに帰ってすっとぼけて寝ていれば、
うやむやになってしまうだろうか。
でも腸までぶっかけちゃったし、なかったことには出来ないな。
それに、走っている間中、Gパンがペニスを圧迫していたせいで、
睾丸からペニスにかけて、鈍い痛みを感じるのだが、それで思ったのだが、
なかったこtになんて根本的に出来ないんだよなぁ。
ふぅー、っとため息を吐くと、踵を返して貝塚の方に顔を向ける。
私は、そっちの方にとぼとぼ歩いて行った。
貝塚の淵まで来ると、下を見下ろした。
むわーんと、シュウマイが腐った様な死臭が、が漂ってくる。
くせっ。
手で鼻を覆って見下ろすと、まず斉木が見えた。
夕べ上から落としたので、でんぐり返しの途中みたいな格好で丸まっている。
その下には牛島。
その隣の、春田がきもい。豚の丸焼きを丸太から下ろした様に、
両手両足を揃えて横になっているのだが、
背中とか顔とかが生ハムでも貼り付けたみたいにただれている。
あそこからこの臭いがしてくると思うと、うぇーっ。
Tシャツの襟を鼻まで引っ張り上げた。
そういえば、斉木が 私と春田はは似ていると言っていたな。
私がターナーで春田がヌーナンで、
ヌーナンが女に起こるとターナーなのだ、と。
見た感じも似ていて、手足が短くて顔がでかくて眉毛が薄くてどんぐり眼で、
つまりキャベツ畑人形みたいな感じで。
あと、ヌーナンの金玉は半分めり込んでいるから、
春田のがそうだったらヌーナン決定、
そして、私の金玉も半分めり込んでいるから、ターナー決定。
でも、待って。
もし春田の金玉がライオンみたいにぶらーんとしていたらどうなるんだろう。
そうだとしても、私は私でターナー決定なのか。
でも、もし春田の金玉がライオンみたいだったら、
そもそも斉木の言っている事が全部滅茶苦茶ってことも言えるかも知れない。
だったら別に私は除草される必要もなく、
埼玉医科大学に行くだけでいいんじゃないのか。
私は貝塚の底を見下ろした。
Tシャツから鼻の先が出た。
ちょっと臭いが、いっちょ確かめに行ってみるか。
ナイフをGパンの尻のポケットに差すと、地面に手を付いて、
後ろ向きで貝塚を降りて行った。
胸のあたりまでは簡単に降りられたが、そっから先は、
つま先を引っ掛ける出っ張りが無かったので、
つま先を擦りつける様にしてずり落ちて行って、やがて、
地面に手を引っ掛けただけの万歳状態になった。
そして、力尽きて手を離すと、ずずずずずーとずべり落ちて行った。
脛はGパンで守られていたが、前腕に幾重もの擦り傷を作った。
いてーっ。
ただの引っかき傷だ、と思ったら、血がぷちぷちとビーズの玉の様に吹き出てきた。
もう私、満身創痍だな。
血を手のひらで擦りながら、春田の亡骸のところに行って、なんとなく見渡す。
春田は、パンツ一丁で、両手首足首をくっつけたまま、向こうを向いていた。
背中など紫に晴れ上がっていて、そこにローソクでも垂らしたみたいに
ぽつぽつと湿疹が出来ている。
花札の桜に、こういう絵柄があったぞ。
私はしゃがみこむと、パンツの後ろに手を掛けて、ずーっと下ろして、
力任せに足首から抜いた。
そして、片足をぐーっと帆掛け舟の様に持ち上げると、ペニスの裏側から観察した。
すると、彼の金玉は…ライオンどころじゃなくて、去勢された家猫の様な、
くるぶしが2つあるような睾丸だった。
そしてそれは私のと同じだ。
眉毛もチェックしてみよう。
後頭部の髪の毛をグッと引っ張ると、顔ががくんと上向きになった。
あご髭の様に湿疹ができているが、顔の上半分は湿疹は無く、
沖縄の豚の顔みたいに、茶色く腫れていた。
我慢してじーっと見ると、ミクロゲンパスタの香りが漂ってくる。
ああ、こいつも格好よくなりたかったのか、と思う。
しかし、全く効果はなかったようで、眉毛が薄いのを通り越して、
窪んでいるので眉の形が分かる、という感じなのだ。
それは私の眉毛と同じ。
ということは、やっぱり彼はヌーナン、私はターナー、と私は納得した。
はー、と、ため息一個。
私は、遺体から離れると、反対側まで行って、ナイフをそこいらに放り投げると、
壁に寄りかかる様に地べたに座った。
ボーッと春田の亡骸の方を眺めていた。するとその近くに鍬鋤が突っ込んである
Gパンが転がっていて、尻のポケットからスマホが覗いていた。
ふと思い出した。あそこには、“エビデンス”なるエロ動画があったなあ。
なんとかいうAV女優が私に似ているとか言っていた。
どんな女だろう。
立ち上がって、そばに行くと、ポケットからスマホを抜き出してきて、
又、元の位置に戻ってきてしゃがむ。
そして再生した。
それは、AV女優が、フェラでごっくんした後、お掃除フェラ、と称して、
2回目3回目の射精をさせるというもので、男優がむずがって、
もう無理、もう無理、と後ずさるのを腰にしがみついて、ちんぽを両手で握って
チューチューアイスでも吸うみたいに吸うものだった。
いいなあ、と単純に思った。
こんな時でも。
つーか、射精なんてキスより簡単なのだ。
小便するよりか面倒でもうんこするより簡単。
私は、ズボンのファスナーをあけて、既に勃起しているちんぽを握った。
でも自分で握っても、さっきミキにやられた様な気持ちよさはない。
他人にやられたいんだよなあ。
つーか、今は舐められたいんだよなぁ。
ふと、自分で舐められないか、と思う。
自分は藤原ひとみに似ているし、自分で舐めたらこのAV男優みたいに、
藤原ひとみに舐められた気分になるのではないか。
オレはそっくりGパンを脱ぐと、ケツの下に敷いて、あぐらをかいた。
前屈みになって吸おうとしたが、全然届かない。
こうすりゃあいいんじゃないか、と、右脚を思いっきり持ち上げると、
アホみたいに舌をのばしてペニスをしゃぶろうと試みた。
そして、どんどん脚を上げると、ヨーガのポーズみたいになって、
舌をベロベロ出しながら自分のちんぽに近づいて行ったら、…がくっと、
脚が首にかかった。
オレはαの様な格好になった。
しかしこの格好になると舐められるのだ。
しばし自分のちんぽを舐めていた。
妙な気持ち。自分のちんぽであって自分のちんぽじゃないような。
抜歯の麻酔の後に、舌の感覚が無いような感じだ。
もしかしたら、お掃除フェラでむず痒いというのはこういう感じかも知れない。
オレはもう、必死に舐めて、首の力だけで自分フェラして発射しようと頑張っていた。
突然ふくらはぎが、つったー、つった、つったぁー。
痛タタタタ。
つったまま、ぐーっとオレの首の後ろを締め付けていく。
痛い、痛い、痛い。
αのオレを、ぐーっと、γの様に締め付けていく。
痛い痛い。
めまいがしてきた、と思ったら、ぼきっと音がして、
目の前が一瞬真っ白になって、そして外れた。
私はごろんと後ろにそっくり返った。
オレンジ色の空が目に入ってきた。
そして、オレンジの空がぐるんぐるん回り出した。
すぐに、魚を吐いた。
これはやばいと思ったがもう動けない。
まだ、オレンジ色の空は見えていた。
すると、貝塚の上に、ミキとヒヨリが現れた。
彼女らはオレンジ色の空に、レンガ色の影になって浮かんでいた。
彼女らに呼び掛けたが、声にはならない。
私は死ぬんじゃないかと思った。
しかし、彼女らの声はまだ聞こえたのであった。
彼女らはこう言っていた。
「もうすぐ ほーそーだよー」