AWC 『十角館の殺人』を殺す方法   永山


        
#559/566 ●短編
★タイトル (AZA     )  25/01/29  17:14  ( 76)
『十角館の殺人』を殺す方法   永山
★内容
「『十角館の殺人』を殺す方法」
 〜 もしもこうなっていたら、あの“衝撃の一行”はなかった? 〜

※小説『十角館の殺人』(綾辻行人 講談社ノベルス他)の真相を知っている人向けで
す。同作を未読の場合、まず意味が伝わらないと思います。
 また、同作の具体的なネタばらしをしている訳ではありませんが、拙作を読んだ上で
『十角館の殺人』を読むと、その構造を見抜きやすくなる恐れは非常に高まります。
 ご注意くださいますよう、お願いします。

※カクヨムでも公開済みです。タイトルは変えています。


             *           *


 推理研の面々が角島に向かう漁船の上にて。
「あんたら、あんなところに行って、一週間も何をするんだね? そもそも満足に寝泊
まりするところがあるのやら」
「その点は大丈夫なんですよ。僕らと同じ推理研の一人が先に行って、あれやこれやと
準備万端整えてくれた上で待っていましてね」
「へえ、そうなのかい」



 館にて第一の殺人が発覚した直後。
「なあ、みんな。思うんだが、とりあえずこのニックネームで呼び合うの、やめない
か」
「え、どうして?」
「人が一人死んだんだ、それも仲間が。いくら我々がミステリ好きだからといって、こ
の状況下でニックネームを使うのは不謹慎のそしりを免れない。違うか?」
「……そうね、その方がいいわ。これからは本名で」



 島田と守須とが初めて会い、互いに自己紹介をしたあと。
「そういえば、君は推理研では何て呼ばれているんだろう?」
「……何だと思います?」



 第二の殺人が起きる直前、皆でコーヒーを飲む場面。
「うん? ……ひぃ、ふぅ、みぃ……」
「どうかしたか。コーヒーカップを見つめて、ぶつぶつと」
「いや、何か昨日と手触りっつーか、感触がちげぇって感じて――ああ、やっぱりな。
このカップ、違うぜ」



 口紅に仕込まれた毒で被害者が出たあと、三人で会話するシーン。
「――待て。煙草はやめといた方がいい」
「ん? どうしてだ。気持ちを落ち着かせるために――」
「そういうことじゃない。毒だよ、犯人が煙草に仕込んだかもしれないじゃないか」
「これに……?」
「そうさ。ミステリマニアとして恥ずかしいよ、何故、今の今まで疑いもしなかったん
だ?ってね」


 〜 〜 〜


 犯人が最初の犯行としてオルツィを殺しに行く直前。
(……待てよ。本当に今、部屋にはオルツィ一人だけなのか? 推理研のメンバーで、
恋人がいるのは自分だけだと思っていたけれども、それが正しいなんて根拠どこにもな
いぞ。実際、自分は皆には内緒で彼女と付き合ってきて、ばれなかったんだし。うー
ん、オルツィに恋人がいるとしたら、あいつ辺りか。もしいたら、まずい。ドアをこっ
そり開けて、中を覗いて確かめる……のはリスクありそうだよなあ。参った。今夜の犯
行開始は中止して、明日一日掛けて、みんなに探りを入れてみるか。恋人がいるかどう
かって……いや、たった一日で正確なところを把握できる気がしない……)
 犯人は今回の合宿での計画殺人をあきらめた。
(次の機会までに、部内の人間関係を調べ上げるとしよう……)


 〜 〜 〜


 終わり





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