AWC 月と影〜弐〜   天魔・零


        
#161/569 ●短編
★タイトル (yut     )  04/04/14  01:00  ( 96)
月と影〜弐〜   天魔・零
★内容
夢を見た。
人の形をした『何か』が数十体と、男と女と『昔の俺に似た少年』が出てくる夢だっ
た。場所は綺麗な桜が咲いている森みたいなところだった。一面桜の木で埋め尽くされ
ていた。
男は二十歳を過ぎたくらいで、女は髪の色こそ茶色だったが美しいとしか言いようの無
い美人だった。
男は右手に日本刀を持ち、『何か』は『手』から鋭そうな爪で、男を斬りつけていた。
男は切りつけてきた『何か』を一閃すると、斬られた途端『何か』は消えていった。
男は「早く逃げろ」と叫ぶと、女は「分かりました。でも、あなたは・・・あなたはど
うするの?」と叫び返した。
「俺は、ここで奴らを食い止める。お前は麗奈さんの所でかくまってもらえ。戒、お前
が母さんを守るんだ」男は『何か』を斬った後、少年にそう言った。
「わかった。母さんは俺が守るよ。父さんも負けないで。早く行こう母さん」
少年は、女の手を掴むと走っていった。男は「ああ」と答え『何か』をまた斬った。
少年と女が走り去った後も、男は『何か』と一人で闘っていた。
そんなときでも俺は、男が『何か』を消した数を数えていた。
男が24体目を消したその刹那、男の右腕は宙に舞い男の近くに落ちた。
正確に言うと、『何か』が男の右腕を切り裂いたのだ。
だが、男は腕と一緒に宙に舞った刀を左手で拾うと、また闘い始めた。
男の闘気はむしろヒートアップした感じだった。

男はその後、幾度となく『何か』を消していった。
だが、男も人間なので限界が訪れた。いきなり倒れてしまった。力尽きたのか、『何か
に』倒されたのか、俺には判らなかった。
男が倒れた後『何か』は男を集団で喰らった。骨も残らず、残ったのは血の跡ぐらいだ
った。
その光景を見た俺は、悲しい衝動に駆られたのか涙を流していた。

「起きろー」
夢から目を覚まし、目を開けると
「やっと、起きた」
隣に従妹の閃奈が寝ていた。
「何してるんだ?」
俺は驚かず、冷静に対処した。
「ちょっとは、驚いたり嬉しがったりして欲しいな〜。」
そう言うと、閃奈はベッドから出た。
「確かにお前は可愛いからな。学校の男共にこんな事やったら、嬉しさで昇天するぞ」
これは事実だと思った。フランス人と日本人のハーフの閃奈は学校の生徒の中でも群を
抜いて可愛かった。
「いくら可愛くても、しゅう兄が振り向いてくれなきゃ意味無いよ」
こういうこと言われると、参る。
「この、ブラコン娘がいい加減兄離れしろ」
俺は閃奈の頭を、軽く叩いた。
「痛いよ。いいじゃない兄離れしなくたって」
俺がよくなかった。学校では授業以外、大体一緒だ。周りの人の視線もなかなか痛いも
ので、「あいつはシスコン」だとか、「従妹に気がある」だとか、言われる身にもなっ
て欲しい。
「ところで、早くしないと遅刻だよ」
言われて初めて気づいた。時計を見ると遅刻寸前の時間だった。
「やばいな。お前は先に行け。俺は後から追うわ」
「ええー。遅刻してもいいから一緒に行こうよ〜」
泣きついてきた。しかも抱きつく始末。
困りもしたが、嬉しさも微妙にあった。
「わかった。速攻で着替えるから廊下で待ってろ」
俺はそういった後、閃奈を部屋から追い出した。
着替えを2分ほど済ませ、閃奈と共に大急ぎで家を出た。
結局、二人とも遅刻をしてしまった。

担任の教師に絞られた後、俺は窓際の自分の席に着いた。
ホームルームの時間は、いつも窓の方を向いていた。
担任の退屈な話を聞くよりも、窓から見える桜を眺めている方が好きだったから。
担任の退屈な話が、クラスに響き渡る。
俺は話を無視して、桜を眺めていた。
「えー、早速だが君達に新しい仲間を紹介する」
担任のそんな声が聞こえたので、一応前を向いてみた。
クラスに、髪の長い女の子が一人入ってきた後、もう一人髪短い女の子が入ってきた。
「髪の長い娘が緋ノ森月華くんで、髪の短い娘が緋ノ森影奈くんだ。名字で分かると思
うが、二人とも双子だ。みんなよろしく頼む」
二人とも、なかなかに可愛かった。そして、聞いたことのあるような声だった。
「転校生の緋ノ森月華です。影奈の姉です。月に華麗の華でげっかと呼びます。皆さん
不束者ですがよろしくお願いします」
ペコリ。
「妹の影奈です。影に奈良の奈でえいなと呼びます。姉共々よろしくお願いします」
ペコリ。
姉の月華と言う娘は、栗色の髪を腰まで伸ばしていたのが印象的だった。
妹の方は、姉とは対照的にショートヘアーだった。髪の色は、こちらも栗色だった。
彼女らは、クラス全体を見回すと何故かこちらを向いた途端、うろたえた。
正確に言うと、俺を見た途端、うろたえた。
「どうした緋ノ森くん?」
担任も彼女らの様子に気づいたらしい。
姉の方が
「なんでもありません」
と言い、担任は
「そうか。ならいいんだが」
と言った。
転校生は、担任が用意した臨時の席に座った。
俺の席がある列の一番後ろだった。
転校生はその後も、チラチラと俺を見てはコソコソ話をしていた。
担任は、退屈な話を再開させた。
俺も転校生には興味があったが、担任の話には興味が無かったので雲を眺めるのを再開
した。
相変わらず、桜が綺麗に咲いていた。
いつも通りの日常に転校生と言う不確定要素が、加わった日だと俺は思った。

〜続く〜






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