#89/569 ●短編
★タイトル (mke ) 03/05/20 16:47 ( 56)
明日より、今日へ。
★内容
何時になれば忘れられるのだろう。
記憶に残りし、全ての事柄は幻影であったのだろうか。
幾たびも夢に現れ微笑する面影は全て過ぎ去りし事象でしかない。
現実ではない事が解っているのだが。
その幻影に会う為に私はまた眠る。
あれは二年前の雨の日。私にとって何かが始まる時の天気はいつも良くない。
昔友人であった人に言われた事がある。
私が企画した遊びの日程は全て天気が悪いと洩らした時、
「インドでは雨を呼ぶ人は聖人だ。」と。
うれしいような悲しいようなほめ言葉。
その日も雨であった。
私は恋してはいけない相手に恋焦がれていた。
別段相手に特別な人がいたわけではない。
しかし、色々複雑な人間関係が絡み、恋してはいけない、
自分の気持ちを伝えてはいけない、上手くいかない事は解っていた。
しかし、時の神は気紛れであった。
当然このような恋は燃え上がる。互いに。しかし私は解っていたつもりであった。
不可能だと。
肉体において解りあえたつもりであっても、所詮精神における関係は互いに相手に自分
を重ね合わせている、異性に自分の存在を投影させているだけ。こうでありたい自分を
重ね合わせているだけであった。
自堕落・目立ちたがり・退廃的・刹那的である自分。
相手に対して求めたのは生真面目・誠実・ひとつひとつに対して向かっていく態度。
それらを自分の物として満足気に見ているだけの自分。
いつしか無くてはならない物になっていた。
しかし同時に互いの生き方は確実にすれ違っていき、互いに隷属関係を強要していた。
いずれ互いに来るであろう永遠の決別について、先延ばしにしているだけであった。
なんと愚かな事であろう。
およそ人類の発生より今日に至るまで人々の中で幾たびも繰り返された過ちを、
自分だけは犯さないと誓っていたはずの過ちを私は犯してしまった。
私は今暗闇の中にいる。果たして道は見えるのだろうか。
それでも人は生きなければいけない。
私は弱い人間であった。
しかしほんとうに過ちを犯したのであろうか。
この問題、古代の哲学者達が永遠に悩み続けていた‘人間’が‘人間’である事との決
別しなくてはいけないのだろうか。
‘死’が永遠からの脱出なのだろうか。
‘否’。
私は持ちうる全ての力をもって否定する。
彼ら古代の哲学者達が出そうとして答えに‘死’
は含まれていない。‘人間’が‘人間’であることが問題を起こすと同時に‘人間’で
あることが唯一そのような状況、悲嘆、絶望から逃れる術を持つと信じる。
確かに私は何かを学んだのであろう。どのような事柄からも。
さあ、立ち上がろう、明日は明日の光が差し、今までとは異なる何かが起こるであろ
う。
今の自分を許すのは自分しかいない。
そして次の自分へと前進することが出来るのも自分しかいない。
もし存在するのであれば‘神’という名を持つものしか知りえない次の自分へ。
明日の私より、自堕落な今日の私へ。