AWC ■愛しのグローリア■      松尾多聞


        
#38/569 ●短編
★タイトル (sap     )  02/11/09  13:30  ( 65)
■愛しのグローリア■             松尾多聞
★内容

 グローリアは二十歳になる米国の人で、絹のようなブロンドが美しくブルー
サファイアの瞳をキラキラ輝かせた素敵な天使でした。私も二十歳。ある熱
い夏に偶然出会ったのです。

 当時、名古屋の極貧学生だった私は伏見のレストランでアルバイトをして
いました。バイト料が出ると栄に繰り出し、パブで生演奏のジャズを聞きに
通いました。黒人バンドに招かれたgesutボーカルが彼女でした。

Are also you a student?(貴方も学生ですか?)
 ロビーで出会った彼女に声を掛けられたのが二人の出会いでした。それか
ら私達はバイトが終わった深夜喫茶で時々会うようになりました。英語が苦
手な私は同級生でサウジアラビアからの留学生アレン(アルアライアン)を
伴い、たった一杯のコヒーで何時間も将来の夢を語り合いました。彼女も苦
学生で、本国から奨学金を貰いながら、得意な歌でアルバイトをしていたの
です。アレンはサウジアラビア石油極東の社員で月給取りの学生でした。

 アレンは「サウジは今、豊かな国だけど限りある資源に依存していて、み
んなが一生懸命に働かない。僕は新しい産業を本国で起こして人材を輩出す
ることが夢で・・」話は止まりませんでした。グローリアは「同じ人間であ
りながら貧富の格差に疑問を感じるの。でも、そんな国だからしょうがなけ
れど・・・でも、教育の格差は許せないの。私はアメリカの教育を改革して
見せる。」明るくなっても話が終わることはありませんでした。彼女はピザ
が好物でしたが結局いっしょに食べたことはありません。しかし、グローリ
アとアレン、誠実で最高に熱い友人だったのです。
 二人はいつも私に激を飛ばしました。「多聞!貴方は自分の考えをもっと
しっかり持つべきよ!だって、自分の人生でしょう?」、「日本人はとても
保守的(Conservative)なのよ!」、「貴方は戦うことがないのね!」・・
私も、もちろん反論したのですが、普段から考えたことのない問題ばかりで
躊躇してしまい、やられっぱなしでした。
 
 私の住む北海道はパイオニアの大地です。ヒット曲も商業製品も北海道で
ヒットすれば全国展開できると、試験販売が盛んに行なわれていました。な
んでも受け入れてみるドサンコ根性があるのでしょう。しかし、経済に視点
を移すと状況は逆転してしまいます。大型の公共工事、農業対策予算、国庫
補助金、、中央におんぶに抱っこではありませんか。大自然のロケーション
は素晴らしいが、サービスは最低とまで言われている裏には大枚を叩いた、
大きな補助に原因があるのだと私は感じています。
 援助の過多は人間を社会を変えてしまいます。アレンが言った現象が利益
誘導型の社会には必ず起こるのです。人間は棚から落ちてきた宝物に群がり
そして拾う順番を決めようと躍起になるものです。その社会は保守的に変容
して副産物の保身が生まれます。保守的な社会のしくみは新しいものや、よ
り優れているものを排除してしまいます。社会全体の成長が止まってしまう
だけにとどまらず、素晴らしい人材を組織ぐるみで抹殺していくことでしょ
う。いま、その現象が政治で経済で行なわれているのです。
 暗黙のタブーに仕立て上げられましたが日本にも素晴らしい革命がありま
した。20代の若者達が命を賭して幕府を倒した明治維新です。彼らは腐敗
と利益誘導のみに獲りつかれて民衆のことを省みない幕府を倒したのです。
坂本竜馬、西郷隆盛、高杉晋作・・近代社会を作った人々ですが決して高級
武士ではありませんでした。長州藩士「奇兵隊長」高杉晋作は20代の若さ
で結核により夢半ばで他界しましたが、その辞世を次のように残しました。

       「面白き ことも無き世を 面白く」

 私はいま、グローリアの言っていた意味を少し理解できるようになりまし
た。社会人も中高年になると保身の影が見え隠れしてくるものです。前進の
無い組織や個人に獲りつきます。嫌いな上司や政治家を思い浮かべてくださ
い。話す内容のほとんどが自己の保身に結びついています。

 出会ってから1年後に私達は空港で別れました。黙ったまま、3人で泣い
て別れました。グローリア!アレン!いま、君達にもう一度逢いたいです。
君達はいま、何をしていますか?今度はコーヒーだけじゃなくてピザも食べ
ましょう。私の友達に報告します。私は息子に「省吾」と名づけました。
   It has regard [ himself ]. Self is considered.






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