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★タイトル (AZA ) 16/04/30 20:29 ( 30)
本の感想>『赤に捧げる殺意』 永山
★内容
・『赤に捧げる殺意』(有栖川有栖他アンソロジー 角川書店)11/3341
被害者が“叫ぶ人”を象った人形を壊したのはダイイングメッセージなのか(有栖川
有栖「砕けた叫び」)。寝ると必ず死ぬとの言い伝えがある部屋と送り付けられた棺と
密室殺人(折原一「トロイの密室」)。山奥の屋敷に迷い込んだ若者が経験した怪奇と
殺人(太田忠司「神影荘奇談」)。娘の命を救ってくれた男性の本当の意図は(赤川次
郎「命の恩人」)。購入した推理小説から出て来たメモには、母の筆跡で謎めいた言葉
が(西澤保彦「時計じかけの小鳥」)。特撮特撮監督の撮影スタジオで、特撮監督が模
型の東京タワーに突き刺さって死んでいた(霞流一「タワーに死す」)。安楽椅子探偵
ならぬ安楽椅子の探偵(鯨統一郎「Aは安楽椅子のA」)。四人組のバンドのマネージ
ャーが殺され、四つの十字架に見えるメッセージを残していた(麻耶雄嵩「氷山の一
角」)。
いくつかのアンソロジーから数編ずつ集めてまとめられたアンソロジー。
麻耶雄嵩の収録作の評判を知って、手に取ったアンソロジーでしたが……。こういう
アンソロジーって普通は、出来映えの特によい物が巻頭から三編目までに登場するもの
だと思っていたけれど、本編はそうじゃなかったような。嫌いじゃない作家が並んでい
たのに、正直言って、おいおい大丈夫かこのアンソロジー?と逆に思ってしまった。四
番目に赤川次郎が登場し、ここまで文章なら赤川次郎が一番うまいな、程度しか感じな
かった。
後半は本格を意識したミステリの佳作が続き、持ち直したかな。「タワーに死す」の
トリックとか、「Aは安楽椅子のA」の動機とか、「氷山の一角」の探偵の立ち位置と
か。「時計じかけの小鳥」は、何が起きているのかはだいたい想像が付くんだけれど、
詰めていく過程が面白い。
このアンソロジーが今二つくらいに感じるのは、まとまりがないのも理由になるか
と。収録作に共通のテーマがあるようには思えない上、タイトルである『赤に捧げる殺
意』も意味不明。同時期に『青に捧げる悪夢』なるアンソロジーも刊行されています
が、対になるタイトルを付けただけ? “超絶ミステリ・アンソロジー”と銘打ってい
るのも、誇大広告のような……。
ではでは。