#8841/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 16/03/12 21:25 ( 23)
本の感想>『死と砂時計』 永山
★内容
・『死と砂時計』(鳥飼否宇 東京創元社・創元クライムクラブ)17/5552
翌日に執行を控えた死刑囚二名が、独房の中で惨たらしい死を迎える。犯人は何故、
死刑囚をわざわざ殺したのか(「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」)。脱獄不可能と
される終末監獄で、過去に唯一人脱獄に成功した男。彼は何故、明るい満月の夜、しか
も巨漢の監視員が当番のときに決行したのか(「英雄チャン・ウェイツの失踪」)。女
死刑囚の妊娠が発覚? 男は立ち入りれない女子監獄で、一体何が起きたのか(「女囚
マリア・スコフィールドの懐胎」)。
世界各国から死刑囚を引き受ける終末監獄を舞台に、奇想と逆説に溢れた事件が繰り
広げられる連作短編集。
全六編、どれもよく考えられていて、堪能できました。死刑囚ばかりの監獄という、
特殊で限定された環境でこそうまく成立する事件が揃っており、それ故に真相が見えや
すい部分はあるものの、充分に満足のいく出来映え。
編中のベストを選ぶのは甲乙付けがたいんですが、一応、「英雄チャン・ウェイツの
失踪」にしておきます。編中ではこれが一番、真っ当な逆説ミステリに仕上がっている
と思うので。あとは真っ当でない逆説ミステリでしょう(苦笑)。
そして何よりも唖然とさせられたのが、最後に収められている「確定囚アラン・イシ
ダの真実」とこれに続くエピローグ。ワトソン役を務めてきたアランがついに死刑執行
を迎えるが、その前に実父の正体を解き明かそうとする物語で、何とも言えない結末が
待ち構えています。動機と、とある事実の判明するタイミングが微妙な気もするのです
が、狙いは面白い。絶対に収録順通りに読んでいくべき連作短編集です。
ではでは。