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★タイトル (AZA ) 14/06/06 22:13 ( 28)
本の感想>『首断ち六地蔵』 永山
★内容
・『首断ち六地蔵』(霞流一 光文社カッパノベルス)15/5541
とある寺の六地蔵から、それぞれの首が持ち去られる。その首が現れる度に、
不可思議な殺人も起きていく。
火災で廃墟となった病院を訪れたロケ隊。その一人が転落死する。それも、
密室状態の部屋の窓から落ちた?/うどん屋の厨房にある大釜で茹でられて死
んだ老女。彼女には赤ん坊誘拐の疑いが/花見の場所取り中に殺された男の胃
には、何故かウナギが丸ごと一匹/大工の棟梁が密室状態の仕事場で殺される。
地蔵と同様に首を切断されていた/現場は足跡なき殺人の様相を呈していた。
しかも被害者は、極短時間で屋根上の十字架に固定されたとしか思えない?/
これまでの五事件を題材とした劇の稽古中、探偵を演じる俳優が殺された。そ
の凶器は地蔵の首だった。
全ての事件は解き明かされたと思えたが。
現実にはなかなか成立しそうにないトリックのオンパレード。でもそれを許
さざるを得ないような物語世界を構築しており、まあしょうがない。各短編で
推理合戦を行った上で、それらを上回る真相を用意し、さらにどんでん返しま
で配置するとなると、このぐらいの無茶はよしとせねば。次々と繰り出される
密室の謎とその解明案、そこだけで満足できるトリックマニアもいるでしょう
し。
最後に来て明かされる真相は、いささか強引で、ロジックも物足りなくはあ
るけれど、全体の構成がとてもよく考えられているので、不満は抑えられるか
な。何ていうか、積極的な証拠にはならないものの巧みな伏線が、これでもか
とばかりに敷かれており、それらを拾っていく心地よさは確かにあります。
脳にずんと来る大きな物理的トリックがあれば、傑作と称してよかったかも
しれないレベルです。ただし、文章の方はギャグも含めて多少、読者を選びそ
うですが。
ではでは。