#7538/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 13/02/03 22:01 ( 24)
本の感想>『たまさか人形堂物語』 永山
★内容
・『たまさか人形堂物語』(津原泰水 文藝春秋)15/4461
亡くなった祖母から、小さな人形店を受け継ぐことになった澪だが、ずぶの
素人の彼女一人では何をどうしていいやら皆目見当が付かない。そこで従業員
を募ったところ、資産家の息子でマイペースの富永青年と、「あらゆる人形を
修復できる方」という条件にも応募してきた職人の師村・通称シムさんが加わ
った。
諦めてしまっている人形も修理します――この謳い文句のおかげか否か、店
はぼちぼち繁盛する反面、変わった依頼も多いようで……。
読み始めて、あらこの作者、こんなに不親切な書き方をする人だったっけと
首を傾げました。情景が浮かばないし、このシーンにどんな登場人物が何人い
て誰が喋っているのかが、さっぱり分からなかった。一から十まで説明するの
はかえって下手と言えるけど、もうちょっとこう語りながら状況を理解させる
技術のある作者だと記憶していたので。
でも読み進める内に、その点は解消。そして、一度飲み込めれば、あとは分
かり易く、すいすい読める。キャラクターは立っているし、台詞は活き活きし
ているし、テンポがよい。店を閉じる経緯を扱った最後の二話なんて、読んで
いる間、ほんとに残念だなと感じました。
人形という題材を得て、こういう風に物語を豊かに膨らませられるのは、素
晴らしい。特に、ラブ・ドールにまで言及して、下ネタや気持ち悪い感じで終
わらないのは、恐れ入ります。
はっとさせる気付きの楽しみもあり、面白かったです。
ではでは。