#6466/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (mor ) 11/01/14 12:35 ( 33)
読書感想>「氷の華」天野節子・守屋
★内容
「氷の華」天野節子
TVドラマ「目線」の作者の第1作。ドラマのトリックがあまりに時代遅れだった(検視
でバレバレ)ので、作者の実力はどんなものかと思い、図書館で借りてみた。
感想は、やっぱり時代遅れ……というより、オリジナリティ不足かもしれない。全体
のストーリーは悪くないものの、80年代のノベルスにいくらでも類似の作品がありそう
な。そして、2時間ドラマとして映像化されていそうな。要するに、ありがちが並んでい
るだけなのだ。
この程度の作者を還暦デビューさせる必然性があったのか? と、非情にも感じてし
まう。もちろん、高齢デビューでもすごい作家はすごい。「信長の棺」の作者のよう
に。だが、この作者はどうかなあ、というのが正直な感想だった。
まず、無関係なシーンや登場人物、会話が多すぎる。必要な人物やその会話に絞れ
ば、全体の分量は半分ですむ。編集者は厳しく指摘して削らせるべきだった。
文章は平易で読みやすいが、作者ならではのこだわりもひねりもなく、ただの説明に
なってしまっている。しかも、ストーリー上、必要のない会話に無関係な説明が続いて
リズムも悪い。
大きな減点材料はヒロインが魅力的ではないうえに、その犯行もまずいことか。いま
さら、2時間ドラマの知識や感性で毒殺事件を書かれてもなあ。
ヒロインは36歳なのに、発言の語尾が「ですの」「ですわ」。松本清張の時代じゃな
いんだから……。作者は有閑マダムを描いたつもりなのかもしれないが、それこそがど
うにも時代遅れだ。こういうヒロインを描きたいなら、昔の事件を回想するという構成
にしなければ、読者のほうが無理を感じてしまう。
毒薬の知識も古い。入手しやすい農薬を使ったのだろうが、これの致死量は60グラ
ム。誤飲防止のため色も匂いもつけてあるはずで、被害者が気づかず一気飲みするのは
おかしい。
青酸カリにはさらなる無理が。80年代以降、警察が厳しく管理させているため、入手
経路は限られる。メッキ工場から盗み出した、で通ったのは昔の話である。しかも、空
気に触れればどんどん無害化するため、素人には管理できない。
作者の知識や感性が古いことを逆用し、昔の事件の回想という形でなら成功するので
はないかと思う。