AWC 本の感想>『蝦蟇倉市事件1』   永山


        
#6453/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  11/01/07  21:11  ( 33)
本の感想>『蝦蟇倉市事件1』   永山
★内容
・『蝦蟇倉市事件1』(道雄秀介 他著 東京創元社)12/5331
 交通量の割に事故が多発することで知られる“弓投げの崖”。そこでの些細
なきっかけからのトラブルが、意外な展開を見せる(「弓投げの崖を見てはい
けない」)。過去の不可能犯罪に関する話をするべく、依頼人の男を連れて自
室に戻った名探偵が、急な眠気に襲われる。次に気が付くと男は死んでおり、
部屋は密室状態であった(「不可能犯罪係自身の事件」)。死んだ男性は、誰
にも持ち上げられないであろう銅像の下敷きになっていた。頭部が潰されてお
り、身元確認に時間を要したが、やがて被害者は銅像の制作者と分かる(「G
カップ・フェイント」)。
 不可能犯罪が頻発することで知られる蝦蟇倉市を舞台に、五人の作家が五つ
の事件を描いたアンソロジー第一弾。

 むー。不可能犯罪物をテーマとしたアンソロジーということで、期待させら
れた分、落差が大きかった。
 「大黒天」は不可能犯罪物ではないし、単なるミステリとしてもレベルがち
ょっと。「浜田青年ホントスカ」は、伊坂幸太郎らしさは出ているようだし、
ブラックな中にも洒落ていて悪くないが、これも不可能犯罪物ではない。「弓
投げ・」は、道雄秀介らしい騙しがあって本格推理の範疇には入るだろうけど、
やっぱり不可能犯罪を扱っていない。
 「Gカップ・」は謎の設定こそ不可能犯罪だが、かなりばればれ。それとは
別に、格闘技小説として、あまりにも現実をなぞったような描き方は個人的に
評価できず。文章も粗い気がする。
 唯一、「不可能犯罪係・」が堂々たる不可能犯罪物であり、感想サイトでも
高評価を得ているが、これにも首を傾げる点が多々あった。犯人自身がトリッ
クを見抜かれかねないヒントを探偵役に漏らしているのは、大きな欠点だと思
う。また、作中で描かれた動機なら、殺人でなくても、血痕を残して密室から
人間が消失した、ぐらいにとどめておいていいんじゃないか。他の四編が期待
とは違う傾向だったせいで、評価が甘くなったのではないかと勘繰りたくなる。
 テーマを決めた競作としては、各作品内で別の作品について少し触れている
お遊びもあり、よかった。これで中身もテーマにびしっと応えていたのなら、
文句なしだったんですが。

 ではでは。





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