#5867/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 09/12/13 22:26 ( 30)
本の感想>『紳士ならざる者の心理学』 永山
★内容
『幽霊紳士』に続くのはこれだろうってことで(笑)。
・『紳士ならざる者の心理学』(柄刀一 祥伝社ノンノベル)16/5542
急死した父の遺言状はどこにあるのか。相談を受けた龍之介は、些細な出来
事の中からヒントを見つけ出し、携帯電話越しに推理を繰り広げる(「召され
てからのメッセージ」)。大学の研究室からゲームの試作機が消える。その謎
を追う内に、関係者の一人が感電死。二つの事件を引き起こした心理的な罠と
は(「紳士ならざる者の心理学」)。龍之介の念願だった学習プレイランドが
遂に完成。そのお披露目の場で、ピンホールカメラで記念撮影をしたところ、
宙に浮かぶ幽霊のような少女が写っていた(「少女の淡き消失点」)。
五つの短編が収められた天才・龍之介がゆく!シリーズ。
このシリーズ、初期の頃は物理ネタを取り込んだだけのストレートすぎる本
格ミステリという印象が強く、さほど評価していなかったのですが、巻を重ね
るに従い、面白さを感じるようになってきました。私が慣れたのか、作風が微
妙に変化しているのかは分かりませんが、読ませる部分が大きくなった気がし
ます。
本書の白眉は、「見られていた密室」でしょう。犯人に襲われ、瀕死の傷を
負った男が逃げ込んだ部屋は、モニターカメラが設置されている。男はもう助
からないと悟ったが、犯人を示す何かを遺そうにも、犯人にモニターで監視さ
れている。犯人側もダイイングメッセージを遺させまいと、注視を怠らない。
被害者と犯人の命運を賭けた対決の結末は――という風に、ともすればお手軽
トリック・作者の手抜きと揶揄されがちなダイイングメッセージ物を、緊迫感
のある形で魅せています。
ストーリー面では、学習プレイランドで働いてくれるスタッフ探しという、
まるでロールプレイングゲームにおける仲間探しのような設定をうまく活かし
ているなあ、と。バラエティに富んだネタに次々とぶつかっても、さほど不自
然に感じません。また、総じて心温まる展開が多いのも長所かと。
ではでは。