#5828/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 09/11/22 22:19 ( 22)
本の感想>『幽霊紳士』 永山
★内容 09/11/24 03:50 修正 第2版
・『幽霊紳士』(柴田連三郎 文藝春秋)16/6352
女社長が心中した、老友が自殺した、女子学生が賭をした etc……面に表れ
た出来事は本当にそのまま受け取っていいのか否か。髪も装いも、肌の色まで
もが灰色がかった紳士が現れるとき、それまで信じていた物が反転し、別の状
況が明らかになる。
大坪砂男の提供するアイディアを元に、柴田連三郎が月に一編のペースで連
載した短編十二本。
評判を聞き、図書館で借りて読みました。昭和三十五年出版の代物で、扱い
に特に気を遣わねばならないほど古びて、よごれた本。修復されており、背表
紙は図書館の方で改めて付けたのか、「紳士幽霊」となっています。
でも、中身は古びていません。構図の逆転が見事。登場人物の連鎖という趣
向も楽しく、現代の工夫を凝らした連作に通じるものが。
読点の多い文章がやや読みにくいですが、時事ネタをほとんど取り入れてい
ないせいか、さほど古くささを感じさせない。アダルトなネタが多いのは、当
時なりの読者サービスだったのかしらん。
推理小説として読むと、手掛かりの提示や決め手の部分でかなり弱い。でき
ることなら、一つ一つのアイディアをじっくりと煮詰めて、長編に仕立ててほ
しかったくらい。逆に言えば、それだけ贅沢な連作短編集だということでしょ
う。
ではでは。