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★タイトル (AZA ) 09/02/11 19:00 ( 29)
本の感想>『白魔の歌』 永山
★内容
・『白魔の歌』(高木彬光 角川文庫)11/4331
昭和初期、色白の牧師が殺人に手を染めた、通称白魔事件。その犯人もとう
に獄死した昭和三十年代、白魔事件を担当し、現在は刑事を引退した身である
鶴巻俊之輔は、弁護士に奇妙な頼み事をする。“もしも自分が死んだら、解剖
して、真相を名探偵・神津恭介に解き明かしてもらいたい。謝礼には三千万円
をはずもう”というのだ。
しかし神津は他の事件の調査のため、外国へ出向く必要もあり、依頼を断る。
その間、鶴巻家には白魔を名乗る脅迫状が相次いで届き、ついには殺人まで起
きてしまった。被害者は毒殺された上、パチンコの紐を首に巻かれ、額にはコ
ルク抜きを突き立てられるという、不気味な装飾が施されていた。さらには、
拳銃の弾が口に押し込められており、それをくるんでいた紙には、次の殺人を
示唆するメッセージが。
外国の事件を解決し、帰国した神津が解き明かす、怪事件の真相とは。
図書館処分本からのちょうだい物。
連載されていたのか、章のつなぎ目で、重複した記述が見られます。また、
文章自体も安易に同じ接続詞を連続使用している節が、多々、見受けられまし
た。にも拘わらず、それなりに高いリーダビリティを保っているのですから、
小説が下手ということは決してありません。想像するに、多作・多忙な時期で、
充分に練らないまま、勢いで書き上げたのではないかと邪推。こういう面をサ
ポートするのが編集者だと思ってたんだけど、違うのかな。
さて、面白く読み進められたものの、結末から振り返れば、うーんと首を傾
げざるを得ません。出版社は「本格推理」と銘打っていますが、これは違う。
本格としてのけれんは乏しいし、推理の部分はあまりにも脆弱。極言するなら、
神津の印象推理――想像と直感が当たっていただけ、となりましょう。
犯人の意図、事件の構図はユニークです。これらを活かすために、もっと凝
りに凝った本格推理に仕立てて欲しかった。
ではでは。