AWC 本の感想>『天城一の密室犯罪学教程』   永山


        
#5326/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  09/01/18  21:47  ( 35)
本の感想>『天城一の密室犯罪学教程』   永山
★内容
 その前に。
 AWC大賞部門賞の投票は今日が締め切り。そしてお題募集中。

本の感想>『天城一の密室犯罪学教程』(天城一 日本評論社)12/6141
 幻の探偵作家とされた作者の作品集、待望の刊行。
 密室トリックの分類を、実践編と理論編に分けて行い、さらに、“見えない
人”を扱った傑作として名高い「高天原の犯罪」を始めとする、これまでの短
編数編からなる。

 やたらと評価の高い本書ですが、些か過大評価のきらいがあるようで。まと
まった形で読めなかった物が出たということで、ご祝儀的ニュアンスなんでし
ょうか。
 噂に聞いていた通り、小説としては下手を通り越して、稚拙なくらい。でも
それは純粋なトリックミステリを志向したが故……とも聞いていたのですが、
その評価にも首を傾げてしまいました。状況の描写が決定的に不足しており、
謎が謎として形作られる前に、解決されてしまう感じ。
 加えて、小さな見落としがあちこちにあるような。たとえば、「むだ騒ぎ」
では、列車アリバイトリックが出て来ます。ところが、掲載してある時刻表の
どこを見ても、そのトリックに使われた列車が載っていません。本文中では触
れているものの、そこから真相に到達するのは不可能ではないでしょうか。ま
た、「黒幕・十時に死す」では、刑事が意識を失っていた時間を最初は三分ぐ
らいと思っていた、とあるのに、あとの方では一分ぐらいになっています。三
分という数値はトリックに関わっており、それに引きずられて筆が滑ったので
しょうか。
 個人的には、前書きとして解説を付した大上段に振りかぶった感のある「盗
まれた手紙」は肩透かし。勘のいい読者なら瞬時に見抜けるであろう謎を、く
だくだしく論じられて終わり。
 とはいえ、「高天原の犯罪」と乱歩への批判を込めた献詞、そして密室作法
の載った本書は、マニアには逃すことのできない作品集であることは間違いあ
りません。

※「むだ騒ぎ」に関しては、作者自らによるフォローがあったかもしれないの
ですが、その文章を見つけられずにいます。

 ではでは。





前のメッセージ 次のメッセージ 
「◇フレッシュボイス過去ログ」一覧 永山の作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE