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★タイトル (AZA ) 09/01/12 23:22 ( 24)
本の感想>『美女』 永山
★内容
・『美女』(連城三紀彦 集英社)19/5662
美容整形の大家として名をなした医師は、女たらしでもあった。そんな彼の
元を訪れたある女性が、妙なことを頼んできた。明らかに今より醜くしてほし
いと願っているのだ(「夜光の唇」)。一本の電話から始まる、七人の男女の
物語。それは連鎖反応を起こしたかのように――(「喜劇女優」)。会社帰り、
地下鉄の駅を出ると降っていた雨。そこから既に始まっていたのかもしれない。
妻の浮気を知らされた男は、知らせてきた女から持ち掛けられた“復讐”計画
に乗ることにした(「夜の右側」)。
ミステリ作家にして恋愛小説の名手が魅せる、珠玉の短編集。
これは凄い。
絶賛している書評サイトがあったので手に取りましたが、大当たり。『美女』
なんていうタイトルだから、ミステリの短編集とはつゆとも思わない。ミステ
リと教えられても、女と男のどろどろした話か、心理サスペンスのような内容
を連想してしまいがち。
でも、元々「幻影城」出身の作者だけに、やはり根底には本格のスピリット
が流れているんだなあ。物語の多面性、見事な裏返しを堪能させてもらいまし
た。粗筋では触れませんでしたが、「夜の二乗」もよかった。佐野史郎主演で
ドラマ化されていた記憶が。
それだけでなく、情緒的なストーリーで、いわゆる文学的な観点からも、高
いレベルに達していると思います。本格ミステリでありながら、ここまで“文
学”しているなんて、普通に考えれば、奇跡のようなことではないかと。
ではでは。