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★タイトル (AZA ) 09/01/09 22:41 ( 28)
本の感想>『七番目の仮説』 永山
★内容
・『七番目の仮説』(ポール=アルテ 著/平岡敦 訳
ハヤカワポケットミステリ)15/6441
一九三八年八月末。ロンドン市警の巡査は、見回りの途中で、奇怪な風体の
人物を見掛けた。中世様の衣服を身に着け、顔には仮面、まるでペストを診る
医者のような格好。ごみバケツの前で立ち止まり、何やらごそごそとやってい
たその人物を呼び止め、質問するが、はぐらかされる。三つのごみバケツの中
を調べるが、特に怪しい展はない。ところが、仮面の男にもう一度バケツを見
るように促され、その通りにすると、何と中には若い男の死体が!
そこから遡ること十数分、近くのアパートでも奇妙な事件が起きていた。医
師と称する三人の男が、ペストに罹ったという住人を搬出しようとしたが、担
架に乗せたその住人がアパートの廊下で、煙のように消え失せたのだ。
相次ぐ怪異は、しかし、更なる大事件の幕開けに過ぎなかった。
不可能犯罪の大家、ツイスト博士が導き出した七番目の仮説とは?
謎の魅力は抜群。ごみバケツという道具立てはちょっとしょぼくれているが、
舞台でのイリュージョンを見せられているかのよう。
でも、解決を聞くと恐らくたいていの読者はがっかりするでしょう。ある程
度、本格ミステリを読み込んだ読者なら、この謎の完全解明は無理でも、おお
よその見当は付くと思います。しかし、その想像を超える物が、真相にはない
感じ。一点でも超える物があれば、「おお!」となるのですが。
とはいえ、上記二つの謎に続く展開には、大変引き込まれました。特に、二
人の男が決闘として、一人が殺人を起こしてもう一人に濡れ衣を着せる、とい
うくだりは素晴らしい。この着想だけで、ギャンブル漫画のテーマになりそう。
解き明かされてみると、計画犯罪だったことが分かる訳ですが、ここまで上
手く行くものだろうかと、疑問に感じないでもなし。次善、三善の策を用意し
ていたに違いないんですけどね、文句を付けたくなるものです(笑)。
ではでは。