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★タイトル (AZA ) 08/12/26 20:48 ( 27)
本の感想>『天使が開けた密室』 永山
★内容
・『天使が開けた密室』(谷原秋桜子 創元推理文庫)14/4451
行方不明の父親探しのため、アルバイトに精を出す女子高生の倉西美波は、
些細なトラブルから六十万円の借金を背負う羽目に。手っ取り早く稼げるバイ
トを探していると、「一晩寝ているだけで五千円」という話を持ち込まれた。
訝しみながらも引き受けた結果、殺人事件に巻き込まれ、挙げ句、犯人扱いさ
れる始末。
衆人環視の状況下で、犯人はどうやって殺害を実行し得たのか。
作者のデビュー作である表題作に、短編「たった二十九分間の誘拐」を併録。
殺人発生までが長い。
上の粗筋と本書に記された粗筋とは大差ないのですが、この粗筋を掲げてお
いて、殺人事件が起きるまで全体の約三分の二を使うのは、引っ張りすぎ。前
半部分に伏線を張ってあるものの、もっとコンパクトにできる内容のはず。
まあ、推理小説としてはきついけれど、ライトノベルの青春学園コメディ的
ストーリーとしてなら、充分に読める物です。短編のアイディアを薄めて長編
にしたというより、短編二つをくっつけて長編に仕立てたような印象でした。
さて、密室トリック。タイトルに入れるぐらいだから自信のあるものなんで
しょう。確かに、ちょっとした盲点を突いており、うまい。
ただ、このトリックを成立させるための前提状況、それがいまいちぴんと来
ない。こんな大げさなことをしなくても、普通に構えていて、結果が出てから
行動を起こせば済むのでは?と疑問を覚える。そうすると密室ではなくなって
しまうのですが……。もう一歩、踏み込んで詰めて欲しかったです。
謎の見せ方や改め、他の方法が使われた可能性を封じる手際などは、よくで
きています。ミステリの骨法を知っている人なんでしょう。それだけに、もっ
ともっと濃いミステリを書いてくれることに期待。
ではでは。ストーブ、とりあえずテスト点火してみた。