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★タイトル (AZA ) 08/11/09 20:41 ( 34)
本の感想>『人狼城の恐怖』四部作 永山
★内容
・『人狼城の恐怖』四部作(二階堂黎人 講談社ノベルス)18/9441
川を挟み、ドイツ領とフランス領にそれぞれ建つという双子の城、人狼城。
旅の一団がそれぞれの城に招き入れられたとき、連続殺人の幕が切って落とさ
れた。
続出する密室殺人。遺体をばらばらに切断し、血を皿で受ける理由は? 夜、
壁の向こうから聞こえるのは、怪物の徘徊する足音? 部屋で寝かされた夫人
は、一瞬にして頭部を捻り取られた? 甲冑を纏った犯人が消える……etc 。
そしてロンギヌスの槍、ハーメルンの笛吹男の謎がちらつく。
この前代未聞の怪事件を解くべく、名探偵・二階堂蘭子はフランスに飛んだ。
四百字詰め原稿用紙換算で四千枚を超えるという、世界最長の本格推理。
※ちょっぴりネタバレ注意
何年前になるか、東京からのオフ帰り、新幹線の中で第一部のドイツ編を読
み始めたものの、生憎と座ることができず、本の分厚さもあって、途中で挫折。
以来、放置していたのですが、去年後半から鉄道での長距離移動の機会が増え
たため、読書再開。やっと読了できました。
賛否両論、毀誉褒貶はあるものの、これだけの大作を書き上げたことには、
やはり敬意を表さねばなりません。謎を構築する努力の項目は、原則的天井で
ある6点を遥かにオーバーする9点を進呈。ドイツ編とフランス編は、一級の
怪異恐怖譚に仕上がっていたかと。
対照的に、探偵編や解決編が、いささか拍子抜け。蘭子達が城の場所を発見
する流れが、かなり不満です。ロジックで発見して欲しかった。動機はまあし
ょうがない。これだけの大量殺人だと、こういう動機にせざるを得ないでしょ
う。密室トリックの解決は、共犯が多すぎてちょっと白ける。でも、手掛かり
の提出の仕方はうまい。
解明のくだりで、何度読み返しても理解できない箇所があったのだけれど、
後書きでフォローが入っており、ほっとしました。とはいえ、これは改訂版を
入手せざるを得ないような(まさか出版社の作戦か?)
作中、ちらっと登場する蘭子の元ボーイフレンドって、もしかして別の作家
のミステリに出て来る名探偵? 多木佳未来(たきよしみくる)ってのが、微
妙な変形アナグラムになっているような。それとも、これまた作者の引っ掛け
かも。
ではでは。