#5007/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 08/06/15 20:15 ( 36)
本の感想>『夏期限定トロピカルパフェ事件』 永山
★内容
ドラマ「古畑中学生」、昨日の放映だったのね。まさか、再放送分と同じ日
にやるとは思わず、見逃した。orz
自宅で録画予約して来たから、録れていると思うけど、感想を一日一書き込
みに当てる目算が……。
てことで、本の感想の棚卸。
本の感想>『夏期限定トロピカルパフェ事件』(米澤穂信 創元推理文庫)
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『春期限定いちごタルト事件』から一年と少し。高校二年生になった小鳩と
小山内の両名は、相も変わらず、小市民になろうとしてなれず、模索の日々を
続けていた。
夏休みに入り、小鳩は小山内の頼みを聞く格好で、彼女の選んだ町内スイー
ツ巡りに付き合わされることに。その過程で、例によって例のごとく、小さな
事件や小さくない事件に巻き込まれる羽目になる。
前作同様、「小市民」の使い方に違和感を覚えます。それはさておき。
ほぼ全編が小鳩の視点で語られるため、他の登場人物に対する見方も小鳩に
近いものにならざるを得ず、それが欠点になった感じ。これのせいで、読者が
先んじて真相に辿り着くことはない気がします。
小鳩の視点でないらしい箇所も散見されますが、この形を取った積極的理由
が分からない。ミステリの演出として、効果を上げたとは思えないのですが。
とはいえ、本書に対する最大公約数的な評価であるらしい「キャラクターと
謎とが密接に関連したミステリ」というのは、なるほど確かにそうだなと納得
できます。そういう作品をこしらえるのは、単品ではなかなか難しい作業にな
ると思うのですが、本作は前作を受けて、うまくやった印象を受けました。
ミステリのロジックとしては、極些細な点で引っ掛かることがいくつか。た
とえば「シャルロット・」の解は、作中に示されただけでは不充分な気がしま
す。私が思い付いたのでもOKでは、とか。全体を通しての事件の方は、こん
なにうまく行くのかなという疑問が大きい。アクシデントで頓挫する可能性、
結構高そう。
でも、相対的には充分に楽しめるロジック展開でした。謎が何なのかを明か
さない、換言すれば読者が謎を見付けなければならないタイプ自体、貴重でし
ょうし。連作短編集ではなく、長編の顔を最初から見せたこともプラスに評価
したいです。
ではでは。