#4447/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (mor ) 07/09/09 16:11 ( 57)
感想・守屋>「お題>リドルストーリー>旅は道連れ」
★内容
>「『赤い洗面器』のオチ、知ってる?」
インパクトのある書き出しです。知らないのに、答えを聞きたくなります(笑)。
全体としては面白かったです。冷静になってみると、ひとつの話として使えない小ネ
タを集めたのかな、とは思いますが、読んでいるときは記述者である「私」に感情移入
し、早くオチを聞かせろ! と自分も前のめりになっていました。
ただ、最後の最後で、またもや構成に難が……。なぜここだけ、3人称? 逆効果だ
ったのではないでしょうか。ここも1人称のままだったほうが、感情移入していた読者
も楽しめたのになあ、と残念です。
それに、3億円事件についても、もう少し触れられればよかったのではないでしょう
か。彼がどういう役割をしたのか、「証拠のぶつ」がなにか、等々、書かれていれば興
味深いネタはいくらでもあります。
不完全燃焼の読者はまたもやもっと聞かせろ! と思わせられるわけですから、この
ラストでは読後感がいまひとつかも……。面白くはあったのですが、すっきり感に欠け
るというか。
今後、似たような話を書かれるときには、ぜひ考慮していただきたいです。
作品とは無関係ですが、自分もちょっとした3億円事件通かもしれません。
3億円事件とは、68年暮れに東京・府中市で起き、75年暮れに時効が成立した現
金強奪事件です。実際には現金を積んだ車ごと乗り逃げされたので、「強奪」でイメー
ジされるような暴力沙汰はありませんでした。もちろん、白バイ警官に変装したり、発
煙筒を使って騙したりしたので、詐欺や窃盗ではなく強盗罪には違いないのですが。
従業員500人以上分のボーナスということもあって、被害金額は前代未聞。40年
近く経った現在でも、強盗の被害金額にしては突出しています。
参考までに書きますと、5年前に公開された映画「天国と地獄」で要求された身代金
の金額が3千万円。この予告編をヒントに3月末、吉展ちゃん誘拐殺人事件を起こした
という犯人の要求額が50万円(!)。同じ年の5月1日に起きた、やはり誘拐殺人の
狭山事件の要求額が20万円(!!)。被害者の殺害後に身代金を要求した凶悪さが断
罪され、両者とも逮捕された被告人は死刑判決を受けています。
さらに余談。狭山事件はどう考えても冤罪なので、救援運動が盛り上がって仮釈放さ
れましたが、非差別部落の住人に疑いを向けられた理由のひとつは、要求金額の少な
さ。当時は身代金目的の誘拐罪がなかった(営利誘拐罪はあった)とはいえ、殺人罪に
は死刑判決も出るのです。殺してから要求するにしては、金額が少なすぎやしないかと
思われたのです。
この狭山事件も3億円事件に負けないほどのミステリー。被害者の家族や、死刑囚と
された石川氏とその家族にとっては不謹慎なことでしょうが、真実を知りたいと願う素
人探偵の活発な議論がネットで続けられています。
3億円事件の話題に戻しますと、直後は本当にセンセーショナルな事件だったのでし
ょう。1億総探偵状態だったとあちこちに書かれていますから、家庭でも職場でも、犯
人は誰だという話題で盛り上がったに違いありません。
面白いと書くと語弊がありますが、変わったところは時効成立後、われこそ真犯人な
りと主張し、インタビューに応じたり著作を出版したりした人間がたくさんいたことで
す。もちろん誰も本物ではなく、統合失調症(当時は精神分裂病)による妄想の域を出
ていなかったのですが、いかに病気が原因の妄想であっても、われこそは残虐非道な強
盗殺人犯なりとかオウム真理教の一員なりとかの主張はめったにないわけですから、こ
の事件がいかに市井の人々の喝采を浴びたかが察せられます。
犯罪は犯罪でも、誰かに危害を加えた殺人や傷害と違い、カネだけを奪った手口がス
ピーディーでかっこいいと見なされたのですね。
関連本の中でオススメは、むらきけい著「雨の追憶 図説三億円事件」(文芸社)。
読んでいる……というか、絵を見ていると、マニア心をくすぐられた人がここにも、と
親近感を持ちます。サイズが大きく、お値段もちょっと高めなので、よろしければ図書
館などで探してみてください。
感想より雑談のほうが長くなってしまいました。どうもすみません。