AWC 本の感想>『千一夜の館の殺人』   永山


        
#4190/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  07/06/17  20:08  ( 32)
本の感想>『千一夜の館の殺人』   永山
★内容
・『千一夜の館の殺人』(芦辺拓 光文社カッパノベルス)6/3120
 世界的な発明をしながらも、日本では不世出に終わった工学博士の死により、
莫大な財産が遺族に渡ることとなった。すると、遺産を受け取る有資格者が、
次々と襲われ、不審死を遂げる……。
 遺産の一つであるハードディスクの中身は? 千一夜の館の秘密とは? 名
探偵・森江春策の下を離れた助手・新島ともかが、幼なじみののために孤軍奮
闘する。

 駄作とまでは言わないが、失敗作。
 問題文に答が書いてあるテスト問題に似たものを感じます。謎自体は簡単で
はないが、描き方が下手で、あからさまだったため、容易に想像できてしまっ
た。推理で辿り着いたのではなく、あくまで直感で想像できただけですが、作
者のやりたいことが透けて見えるのはよくない。小説の読者、特にミステリの
読者は、作品に完全には没入せず、外から眺めるものだという実態を、作者は
軽視しているんじゃないかなという気がしました。
 あと、昔ながらの“探偵小説”を志向した語り口なのは分かるものの、はっ
きり言って、逆効果。リーダビリティが悪すぎます。上述したことと合わせる
と、分かり切った物語を勿体ぶった文章で読まされているようで、苦痛でした。
連載小説ならともかく、書き下ろし長編で「予告風暗示」や代名詞、仄めかし
を連発されても、いらいらするだけじゃないかと。
 もう一点。手掛かりを示すに当たって、あからさまに、「これ手掛かりです
よ」的な書き方をしないでほしい。二つ三つならかまわないけれど、悉くやら
れては、興ざめも甚だしい。物語の伏線を自分の力で見付けたいと(潜在的に
でも)考えるのは、ミステリに限らず、様々なジャンルの小説の読者に言える
はず。
 いくつかの小さな謎が、未解決のまま放置されて終わったような。読み落と
しじゃないと思いたいですが、あまりに退屈な筋書きだったから、ひょっとし
たら……。
 あと、犯人が茶室で犯行を行う直前に、現状を相手から知らされて犯行をや
める可能性が非常に高いと思う。

 ではでは。





前のメッセージ 次のメッセージ 
「◇フレッシュボイス過去ログ」一覧 永山の作品
修正・削除する         


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE