#4025/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA ) 07/03/20 20:49 ( 31)
本の感想>『密室と奇蹟』 永山
★内容
・『密室と奇蹟』(芦辺拓・他 東京創元社)17/6551
ドラマを生放送中のラジオ局で、唯一の女優がいなくなるトラブル発生!
実際の事件の解決に、ドラマをどう成立させるかという問題も加わる一大事に、
現場に居合わせた原作者のカーが奮闘する(「ジョン・ディクスン・カー氏、
ギデオン・フェル博士に会う」)。赤穂浪士が吉良邸に討ち入ってみると、上
野介は小屋の中で既に死んでいた(「忠臣蔵の密室」)。宝石密輸組織の女首
領が、走行中の列車内、施錠された個室にて首なし遺体で見付かる。トイレに
逃げ込んだ怪人物は消え失せ、便器の中からは被害者の頭部が(「鉄路に消え
た断頭吏」)。etc……。
密室の巨匠と賞されたジョン・ディクスン・カーの生誕百周年を記念して編
まれた、日本人作家八名によるアンソロジー。
収録された八編中、最も馬鹿馬鹿しくて面白かったのが、「忠臣蔵の密室」。
カーと忠臣蔵を結び付ける発想、最後に示される関連性のこじつけっぷり。こ
れでトリックもトンデモ系だったら、一級品のバカミスなのですが、そこまで
は行かず。
本格推理として一番よかったのは、「ジョン・D・カーの最終定理」。他と
比べて分量が長い分、力を発揮できたというのもあるかもしれませんが、頭一
つ抜けている印象。実際に起きたという不可能犯罪に対し、カーが遺した直筆
のメモ書きを軸に、リアルタイムでも不可能犯罪が起き、盛り沢山な内容にな
っています。真相が明かされると、細かい伏線が鏤めてあったと分かる辺りも
いい。そしてラスト。本アンソロジーにふさわしいミステリだと思います。
逆にワーストは「少年バンコラン! 夜歩く犬」。ミステリ畑の人じゃない
気がして調べてみると、ミステリも書く人らしかったので首を傾げました。
期待外れは、二階堂黎人の「亡霊館の殺人」。作者のトリック案出能力は凄
いと思うものの、改めが甘くて不可能性が弱く見える、もしくは別解を推理で
きてしまうのは、大きな欠点ではないかと……。
総評としては、カーファンは必読、ミステリマニアにもお勧めできる、でも
忠臣蔵ファンは怒り出すかもしれない(笑)、といった感じでしょうか。
ではでは。