AWC 本の感想>『奇術師のパズル』   永山


        
#3135/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  05/11/22  19:21  ( 29)
本の感想>『奇術師のパズル』   永山
★内容
・『奇術師のパズル』(釣巻礼公 光文社カッパノベルス)12/4440
 十月末の日曜、文化祭を数日後に控えた朝、西枝野中学の体育館には数多く
の出展作品が並べられていた。その一つ、3−Aの立体モザイク「隧道の中の
悪魔」のそばで、クラスの副委員長を務める大河原杏子の遺体が発見される。
傍らには、四月に死んだ新庄朋恵を殺したことを告白する遺書らしきものが。
 しかし、調べる内に、遺書の内容に疑いが持たれ、大河原もまた殺害された
可能性が出て来た。そうなると、密室状態であった体育館に真犯人はいかにし
て出入りしたのかという謎が生じる。それを解くカギは、モザイクの表面に描
かれた人物画が、五人から四人になっていた点にあるのか。
 スクールカウンセラーの棟谷志保子は、数年前に刺殺された婚約者の事件と
のつながりを感じ、解決に取り組んでいく。

 以前に言及した「粗筋だけでトリックの想像がつく」ならぬ、「“作者の言
葉”だけでトリックの想像がつく」作品。ここには引用しないけれど、あんな
ことを読む前に明かされたら、そりゃ分かります。
 それだけならまだしも、作中で、このトリックの用いられた舞台が詳細な図
面として、公にされたことになっている。これはまずいと思う。多くの人間の
目に触れたら、解ける人物が出て来なければおかしい(もちろん、物語の展開
はそんな風にはならない)。
 本格ミステリらしくしようという工夫は見受けられる。でも、テーマとの遊
離が感じられて、いまいち乗れなかった。メインの事件が起きるまでは、退屈
さの方が優っていたくらいで。題名がいかにも本格ミステリなのに対し、内容
は社会問題を取り入れようとしすぎている印象です。トリックを他のプロット
に当てはめれば、佳作の本格ミステリになりそうなだけに、残念。
 それよりも、このスクールカウンセラーを主人公にしたミステリを続けて書
いて行ったら、新味が出るかもしれない。カウンセリングの手法や定説自体も、
入れ替わりが激しいみたいだから、急がないと(笑)。

 ではでは。





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