AWC 本の感想>『館島』   永山


        
#3130/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (AZA     )  05/11/16  22:07  ( 30)
本の感想>『館島』   永山
★内容
・『館島』(東川篤哉 東京創元社)14/5441
 岡山では知らぬ者がおらず、余所では知る者がいないという天才建築家の十
文字和臣が死んだ。彼自身の設計で横島に建てられた館にて、階段から転落死
したように見えたが、遺体を調べると転落ではなく、墜落。階段からでは、明
らかに高さが足りない。だが、館の周辺に墜落した痕跡は見当たらない。
 未解決のまま、半年が過ぎ、事件の関係者が再び横島に集められた。そして
新たに死体が転がる。台風の接近により、島には誰も近付けない。孤立無援の
中、刑事の相馬隆行と探偵の小早川沙樹が解決を試みるが。
 脱力系キャラクター達の騒動を軽妙なタッチで綴った、“名前のない館”で
繰り広げられるミステリー。

 さぶい。
 正直言って、ギャグはほとんど笑えないですわ。特に前半、滑りに滑ってる。
それがリーダビリティにつながっているのならまだしも、邪魔でしかないよう
な気が。その上、探偵役が二人ともおちゃらけていると、なかなか話が進まな
いんで、いらっと来るです。
 ところが、事件が起きると、ギャグの方も好調になってくるから不思議なも
の。車の両輪のごとく、うまく転がっていった印象を受けました。本来なら、
笑える展開は事件発生までで充分なのですが。
 ということで、ミステリの部分はよくできています。不可解な墜死の謎、そ
れに気付くきっかけ、犯人特定の手がかり、館に名前のない理由、館が建てら
れた理由等々、どれもが密接につながりを持っており、しかもフェアに示され
ている。
 難を言えば、仕掛けられたトリックに気付く読者は多いと思われること。直
球を投げてきた作者の度胸には拍手を送りますが、もう少しカムフラージュで
きなかったものか……。
 ともあれ、見た目の点数以上によい作品です。ゆとりのあるときに、のんび
り読むのがいいかもしれません。

 ではでは。





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