#595/9229 ◇フレッシュボイス過去ログ
★タイトル (GSC ) 02/10/07 03:05 (106)
長編 読み飛ばしの感想 /OAK
★内容
#103〜104 源氏の君のものがたり・桐壺(上 下)
本文をそのまま多数引用しますので、ねたばれにつき、ご注意願います。
以下の感想を読む前に、本文(原文)をお読みください。
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先に結論を言うと、私好みの題材と文体で、内容が解りやすくて面白い。
本作品が、紫式部の『源氏物語』とどう違うのか、すなわち、現代語訳に近いのか、
それとも創作に近いのか、私には判断出来なかった。
なぜなら、私は高校生時代に、源氏物語から抜粋した古文を、ほんの少し
読んだだけだったからだ。
それで今、瀬戸内寂聴の訳本の、最初の部分を読んでみた。
そして、『源氏の君のものがたり・桐壺』では、大本の『源氏物語』に無い微妙な心
理描写や人間関係を、鋭くかつ細やかに描いているのに驚いた。
それらの箇所を引用する前に、まずは、私が気づいた 仮名文字チェック:
『三十路も入ってもなお、』
→ 三十路に
『心根が優しいなどと並び立て、』
→ 並べ立て
『私は一層、桐壺の更衣をねぎらい、労わり』?
『二の宮の袴義が終えた頃、』
→ が終わった (または) を終えた
『桐壺の更衣が懸念したからである。』
→ を懸念した (または) が懸念された
『物狂いの親王と言われた私を、父はなぜが特に気にかけ、』
→ 何故か
次は、私(OAK)が感じた疑問:
『私は人ではなかった。』
この書き出しが良いのかどうか?
『しかし私はそ知らぬ顔をしておのが意を貫くことにした。朝廷がそれでどうこうなる
というのならば、壊れてしまえ。 〜
↓
そう言って私は立ち去った。振り向くことはしなかった。』
この辺りは、源氏の君の地位や性格から言うと、ちょっと激しすぎるような…。
父君に向かって次のような厳しいことを言う場面が在るが、もう少し穏やかな方が自
然なようだが…。
『「春宮位にあるのは末の宮。末の宮の子孫が帝位を継ぐかもしれません。先々帝にも
親王がおられる。血筋から言えばあちらが帝位を継がれても不思議はありますまい。弘
徽殿の女御は確かに一の宮の母ではありますが、それだけで一の宮が将来の帝になり、
弘徽殿の女御が国母になるというのはいささかお気が早いのではありますまいか」
「娘可愛さに右大臣が乱を起こすというのならそれこそ不敬の至り。今後の社稷の安寧
を揺るがすことにもなりかねませんのでその時は弓矢で決着をつけるしかありますま
い」』
以下、特に私が感服した箇所、驚いた箇所、考えさせられる箇所の引用:
『私は将棋の王将と同じだった。大切にはされるけれども、結局はひとつの駒に過ぎな
い。』
『仮に娘が栄達を遂げても、その余慶をこうむるべき兄弟が大納言家にはいない訳で、
こうなるとそもそも何のために入内させるのか、その意図が分からなかった。』
『母ひとり、娘ひとりとなれば、故大納言が残した遺産で風流に生きるもよし
〜 ↓
私が知っている穏やかな亡き大納言の面影はどうにも重ならなかった。』
『そのようにして生きていきたいと望みはそれだけであったのに、ただひとつの望みは
叶えられなかったと呟いた。』
『私は身勝手だ。私が愛すれば愛するほどこの人を追い詰めることが分かっていなが
ら、桐壺の更衣を手放すことが出来ない。』
『そこまで心のうちを直視して、私ははたと気づいた。この思いは、今まで私が散々軽
蔑していた父や右大臣らの子の栄華を無理やりにでも願う浅はかな思いと何ら変わらぬ
ではないか、と。』
『もし桐壺の更衣も同じ思いであるならば、権力だの栄華だのに一切関心が無かった彼
女も子を得て変わったということになる。』
『これを私の感傷から来た措置だと彼らは単純に思っているかも知れないが、それだけ
ではなかった。』
『「次の春宮には私の長男たる一の宮を充てたい。異存はおありか」』
『私は右大臣を見据えながら言った。おまえたちが欲しがっていた次期春宮の地位はく
れてやった。これで二の宮を恨む理由もなくなっただろう。私が言いたかったのはそう
いうことだった。』
『というのは二の宮が容姿のみならず何をやらせても余りにも優れていて、帝の子に生
まれずとも土塊の中から拾い上げられてさえ必ず栄達の道を進んだであろうと思わせた
ほどの神童だったからである。』
最後に、『瀬戸内 源氏』を読んで感じたこと:
1 桐壺が亡くなる前よりも、亡くなった後の方に、多くの紙数を当てて
いる。
2 政治的な駆け引きについては、本策よりも婉曲な書き方になっている。
けれども、IKさんの本作の方が、OAKには楽しく読めた。
(勝手なコメントと沢山の引用をご容赦ください。)