#285/567 ●短編
★タイトル (got ) 05/11/18 15:03 ( 36)
お題>再編成 もみじば
★内容 05/11/18 16:11 修正 第5版
今年も歳末謝恩の福引き会場があちこちに軒を出した。
釜屋置次(おくじ)は通りを歩きながら、今年もちり紙だったあの頃を思い出した。
一等エアコン 二等カラーテレビ 三等冷蔵庫 四等しょうゆ1ℓ 五等ティシュ
一箱
ふしぎなもので、あれから云(ウン)十年が経った。今では釜屋の暮らす染井市の全世
帯に上記の一等二等三等そして醤油とティシュが行き渡っている。なんでこんな高価な
数々が自分のごとき薄給取りに揃ったのか、不思議なくらいだ。無料、有料、割引含め
てとにかく揃った。
そういえば、あの抽選で10名様の景品もそうだったし、50名様にもれなくプレゼ
ントもそうだった。はずれたが、自分で買ったので家のなかにあるようになった。そも
そも誰が当たってもいいようなクジ運なんかに名前を連ねた品物は、思想的には参加者
の全員に当たったも同然なのだ。釜屋は抽選現象に「全員当たるの法則」をみつけた。
そこで今年の抽選企画はと見ると、
一等壁掛け液晶テレビ 二等デジカメ 三等電子辞書 四等コチコチ時計 五等ストラ
ップ1コ
だった。もしも当たるの法則にまちがいなければ、釜屋を含め、染井市の全世帯が数年
後には上記のものを全員入手する。しかもこれまでは家電製品や日用雑貨が多かった
が、このごろの抽選企画にはゴージャスな海外旅行も出回ってきた。
一等スイスマッターホルン一週間の旅 二等マレーシア二泊三日の旅 三等沖縄霊園一
泊二日 三等三保の松原日帰りの旅 五等小さな旅三時間の遠足
釜屋置次は数年後には上記のすべての場所に旅するであろう自分を思ってニンマリ頷
くのだった。釜屋は欲しいものを順番付けて景品リストにアップした。だったらいいな
と、きょうびの抽選景品は演繹的にしのぎをけずるのだ。