AWC ニューハーフ殺人事件18    朝霧三郎


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#1154/1158 ●連載    *** コメント #1153 ***
★タイトル (sab     )  22/10/10  11:45  ( 68)
ニューハーフ殺人事件18    朝霧三郎
★内容                                         22/10/10 15:03 修正 第3版

副題:顔がシンメトリーじゃないとトラニーに走る??

レストラン マロニエの前には、ランチの見本が並べてあった。
ラーメン800円。
チャーハン700円。
ランチメニュー(日替)ロールキャベツ、サラダ、スープ付き900円。
「これでいいや」と光男はランチメニューの食券を買った
店内に入ると会議室にある様な椅子を引いて腰掛けた。
「なんだよ、社食みたいな店だな」と光男。
「村上春樹みたいですね」と明子巡査。
「え、なんで?」
「皇居の周りをうろうろしていると、村上春樹みたいにおのぼりさんに
なった気分になるんですよ」
「おいおい、俺らだって警視庁の警察官なんだからおのぼりさんってことは
ないだろう」
「村上春樹の小説って、
はとバスみたいに都内の名所をぐるぐる回るんですけれども、
西武系とか出てこないんですよね」
「へー」
「和敬塾とか、イグナチオの土手とか、伊勢丹の裏の深夜映画館とか、
アルプスの広場とか、
はとバスみたいに東京の名所が出てくるのですが、渋谷とか出てこない。
「ノルウェイの森」に限ってですが。
あれはミツさんみたいに、コンプレックスがあるんですかね。
西武とか金持ちに。
金持ちなんて糞くらえ、と書いていますが」
「村上龍の小説には出てきそうだな。プリンスホテルとか。
村上龍の方が濃いんじゃないの? 村上春樹に比べて」
すぐにロールキャベツが運ばれてきた。

「そういえば、あのガイシャが薄いとか言っていたなあ」
「薄いというか、シンメトリーじゃない、という感じで…」
ロールキャベツを口に運びながら明子巡査が言う。
「やはり「神の死」が関係しているんですが」
「おい、又精神分析かよ」
「表参道のブランドショップには脂ぎっていては行けない、って言いましたよね。
阿部寛やTOKIO長瀬だったら脂ぎっていてもシンメトリーだから大丈夫なんですが、
脂ぎっていてシンメトリーでもない人だったらダメなんですよ」
「えっ。何で?」
「だって大切な商品に手脂がつくから」
「じゃあシンメトリーな奴の手脂だったらついてもいいの?」
「よくはないけれども、ブサメンやキモメンの手脂は特にダメですよ」
「えっ。なんか差別されてる感じがするなぁ」
「でも大丈夫ですよ。ドン・キホーテがあるから。
あそこだったら、「神の死」があるから、
ブサメンでもキモメンでも大丈夫なんですよ。
でもドンキに行っている時点で、自分の身体を嫌っているんですけれどもね。
だって身体からは手脂が滲み出てきますからね。
だから、拒食症患者が皮下脂肪を嫌うみたいに、どんどん身体を殺していくんです。
滅私です。
これは、フロイト博士流に言うと、死に向かっている感じですね」
「死に向かっている?」
「生に向かっている時にはエロス、ペニスの愛ですが、
死へ向かっている時はタナトス、肛門性愛なんです。
性の退行というやつですね。
だから、ドン・キホーテに行った時点で、肛門性愛に走る筈です。
でもこの段階では一人でアネロスでやっている感じです。
しかし、更に進むと、ニューハーフに走ると思うんですよね」
「なにっ」
「元々ゲイじゃないから野郎には走らない。
でも、表参道のブランドショップに行ける程のイケメンじゃないから
女にはモテない。
となると、ニューハーフに走ると思うんですよね」
(まるで昨日の俺を見ていたかの様な発言だ。
そこまで推理しているとは、見かけによらず鋭い女だな)






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